がん専門医の私が受け止めた坂本龍一さん晩年のメッセージ
「健康とか身体とか、ほとんど考えたことがない。万に一つも疑ってなかった。それを後悔しましたよ、もちろん。自信過剰になってたなって」
がんの専門医として40年目、がん患者3万人を診察してきた経験から、診断直後に坂本さんのように動揺する方は少なくありません。その一方で病気を受け入れて、診断当初から少なくとも私の前では心を乱さず冷静に治療に取り組む方がいるのも事実です。その違いは何か。
健康なときから自分の体にきちんと向き合っているかどうかでしょう。番組の途中で「おかしいなと思ったらすぐ診察に」とのメッセージが語られますが、確かにそうですが、正解ではありません。がんは、健康で絶好調なときにできているからです。
事実、私の膀胱(ぼうこう)がんがそうでした。全くの無症状です。「異変を感じたら、すぐに受診」では、治療が間に合わないかもしれません。「体や命は、極めて脆弱(ぜいじゃく)なものである」と思うこと。これが、私自身ががんになった、がん専門医の教訓です。
脆弱な命や体と向き合うには、やっぱり健康なときの意識が大切でしょう。発がんリスクを下げる要因は、たくさんあります。有酸素運動や筋トレ、メタボにならない程度の体重管理、禁煙、節酒、歯磨き、適切な歯科治療、がん検診など。