命を延ばす薬(1)心不全患者に対する「アルドステロン拮抗薬」
また、心筋梗塞を経験した心不全患者6632人を対象とした臨床試験では、アルドステロン拮抗薬である「エプレレノン」という薬を投与すると、プラセボの投与と比べて、心臓病に関連した死亡や入院のリスクが15%、統計学的にも有意に低下しました。
さらに、臨床試験3件を統合解析した研究論文では、心不全を有する患者にアルドステロン拮抗薬を投与すると、プラセボを投与した場合と比べて、41.3日の延命効果が得られました。
なお、このデータは3年間の調査期間に基づく解析結果であり、実際の寿命を踏まえると、より長い延命効果が得られるものと考えられます。仮に調査期間と延命効果が比例するのであれば、30年間で413日の延命効果が得られることになります。ただし、この延命効果の見積もりは、単純計算に基づく筆者の仮説にすぎません。
一方、スピロノラクトンやエプレレノンのようなアルドステロン拮抗薬は、高カリウム血症と呼ばれる副作用が発現しやすく、特にスピロノラクトンでは、高カリウム血症による死亡例も報告されていました。そのような中、高カリウム血症を起こしにくいアルドステロン拮抗薬であるフィネレノンという薬が2022年に承認されています。