在宅介護を円滑にさせる「対話型AI」とは?認知機能を維持する効果に期待
生成AIの有効性は、高齢者施設に限った話ではありません。認知症になると、短期記憶力の低下から同じ質問を何度も繰り返すようになり、在宅で介護されている家族の中には苛立った返答をしたり、つい怒鳴ってしまった経験がある人も少なくないでしょう。
認知機能が低下していても、怒られた際に生じる負の感情は記憶されやすく、家族からとがめられたことで傷ついて自信を喪失したり、逆に興奮して家族と対立し、介護者の介護疲れにつながるリスクが高い。AIに本人が質問する頻度が高い内容を事前に学習させておくと、家族の代わりに返答してくれるだけでなく、家族は質問に取られていた時間を清掃や食事の準備など、ほかの介護に充てることができるでしょう。
生成AIとの会話は、人間のように感情を介さない分、同じ内容を何度も聞いても相手がイライラしたり、怒られることはありません。本人にとってもストレスフリーな対話が可能になるだけでなく、家族にとっても穏やかな生活を取り戻して在宅介護を円滑にさせるメリットがあるのです。
▽塚本浩(つかもと・ひろし) 帝京大学医学部神経内科研修医、同大学医学部神経内科助教、ローマ聖心カトリック大学留学を経て、帝京大学医学部神経内科・医学教育センター助教、同大学医療技術学部臨床検査学科准教授。東京医科大学茨城医療センター脳神経内科准教授。現在は、けんせいクリニック院長、筑波大学付属病院臨床教授(病院)を務める。著書に「老化をとめる脳習慣」「これ一冊で『運転寿命』がぐんぐん延びる 2週間の脳活で合格!! 運転免許認知機能検査 完全攻略本」。