負担を減らす介護法「ユマニチュード」では相手にどう触れればいい?
前回、認知症の方を介護する際に、人間らしさを尊重する「ユマニチュード」の4つの基本技術である「見る」「話す」を意識して行うと、相手に介護する側の思いが届いて介護の負担を減らせる可能性が高いとお話ししました。今回は「触れる」「立つ」についてお伝えします。
着替えや入浴、歩行などの介助を行う際、介護者は必ず相手の体に「触れ」ています。無意識に行っている動作ですが、場合によっては相手の自由を奪う触れ方をしているケースも少なくありません。医療現場では痰(たん)の吸引を行う場面が多く、患者さんにとっては苦痛を伴う時間のひとつです。そのため、吸引時に頭や体を動かして抵抗する患者さんの体を押さえなければならない場面もあります。こうした押さえたり掴んだりする行為は相手にとって嫌な感覚として伝わりやすく、掴まれたら何か“怖い体験”が起こるという感情の記憶につながりやすくなります。広い面積で支え、相手が不安や恐怖を感じないような触れ方を意識する必要があるのです。
以前、当院に入院されていた認知症のある患者さんは、入浴をかたくなに嫌がっていました。介護者は体を清潔に保ってほしい、心地よく過ごしてほしいとの思いから入浴介助を行いますが、それが本人にとっては強い恐怖体験につながっていたのです。不安を解消させられるよう、言葉がけを行いながら体に触れ、時には手をつなぎながら介助を行ったところ、スムーズな入浴ができるようになりました。相手に触れる際は顔など感覚が敏感な部位は避け、背中や上腕など比較的触れても抵抗がない部分を下から支えるように触れるといいといわれています。