台風が来る前にチェック!あなたの「火災保険」どこまで補償される?~基本もおさらい
台風4号は長崎県に上陸した後に温帯低気圧へと変化したが、近年は台風や豪雨災害が頻発している。風水災はひとたび起きれば深刻な被害を出すが、公的支援は限定的。台風が本格的にやって来る前に「火災保険」を確認しておきたい。
■公的支援は「全壊」でも100万円
いったん発生すると甚大な被害を及ぼすのが台風の怖さ。2019年9月の台風15号(房総半島台風)は死者9人、160人が重軽傷を負い、千葉県市原市のゴルフ練習場の鉄塔が倒壊、住宅を直撃したことも記憶に新しい。また翌10月の台風19号(東日本台風)は死者・行方不明者108人、住宅被害は10万棟以上にのぼり、武蔵小杉の内水氾濫でタワーマンションにも被害が出た。
台風が来る前に家の安全点検とハザードマップを確認しておきたい。最近は指定緊急避難場所を表示するアプリ「地図マピオン」のようなものもあるので、上手に活用したいところだ。
そして忘れてはならないのが、「火災保険」。公的支援もあるにはあるが、木造・プレハブ住宅の場合で、流失または床上1.8メートル以上浸水でようやく「全壊」に認定される。それでも受け取れる支援金は100万円で、世帯人数が1人だとそこから4分の3に減額される。
床上1メートル以上1.8メートル未満は「大規模半壊」となり、支援金は半分の50万円。これ以下の床上1メートル未満の浸水でも家具や家電はかなり使えなくなると思うが、残念ながら支援金はもらえない。
そこで加入する火災保険の内容を確認しておく必要があるのだが、最初のチェックポイントは「風災、水災、落雷などの補償」が付いているか。市原市のゴルフ練習場のケースは経営者側と住民側で発生から和解まで1年3カ月を要したが、火災保険の風災には「物体の飛来・落下」という補償がある。
「建物」は車庫やエアコンもカバー
次に「どの程度の損害から補償が受けられ、最大でいくらまで補償されるのか」もチェックしておきたい。
「火災保険は、火災などの被害を受けた場合に保険金をお支払いする保険です。ご契約いただいている保険の対象が何であるかが非常に重要で、建物と家財のそれぞれに火災保険をかけた場合はどちらも補償されますが、建物のみの場合は家財は補償されません」(損害保険ジャパン広報担当者)
なかなか分かりづらいが、「建物」には家そのもののほか、畳やふすま、浴槽、門、車庫や倉庫なども含まれる。意外なところでは、持ち家の場合だとエアコン本体と室外機、エコキュートも建物にあたる。
一方、「家財」は家具や冷蔵庫などのほか、テレビ、パソコン、衣類があって、自転車も含まれる。ただし、価格が30万円を超える美術品や宝石などはあらかじめ契約書に明記していないと補償対象にならない。保険証書を見ても分からない時は、契約先のコールセンターに連絡してみるといい。
■10月から保険料が10.9%値上げ
実はこの火災保険、この10月から保険料が値上げされる。個人向け火災保険の保険料の目安となる参考純率の引き上げは全国平均で10.9%。理由はとても簡単で、台風や豪雨の自然災害が近年多発しているからだ。
例えば、大規模自然災害による年度別の保険金支払額は17年が約1850億円だったのに対し、18年は関空連絡橋にタンカーが衝突した台風21号などで約1.6兆円、19年も約1.1兆円と2年連続で1兆円を突破している。ちなみに東日本大震災の支払額が1.3兆円だったことを思えば、いかに近年の台風や豪雨の被害が多くなっているかが分かる。
損害保険ジャパン、東京海上日動火災保険、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険の大手4社は、家財補償の自己負担の最低額(免責金額)についても10月の契約分から一律1万円を5万円に引き上げるとしている。
これまでは自己負担が1万円で済む契約を結んだ場合、20万円の損害が出たら1万円を引いた19万円の補償が受けられたが、10月以降の契約からは15万円に減額されるというわけだ。
「火災保険の基本」を改めておさらい
では、改めて火災保険の基本をおさらいしてみよう。損害保険ジャパンの回答だが、他の会社もおおむね同じだ。
Q1)台風など風災のみを補償する保険はありますか?
A)「風災による損害のみを補償できる商品はありません」
地震保険も同じだが、まず火災保険に加入する必要がある。火災保険の基本補償で火災や落雷などで生じる損害は補償される。この基本補償に「風災補償」を追加(最初から含めた商品もある)することで、屋根瓦などが破損した際の補償が受けられるようになる。また「水災補償」を追加すれば、昨年の熱海市のような土砂崩れにも対応できるというわけだ。
Q2)台風で自宅の屋根が壊れたが、片づけや修理を行ってもいいか?
A)「防犯・安全上の問題などから片づけや修理が必要な場合は行っていただいて結構です」
洪水や高潮で家屋が水浸しになった場合も同じ。その際に絶対に忘れてはならないのが、被害箇所の「撮影」。保険金請求をするためにスマホでいいので全景、近景を複数の角度から撮影しておきたい。
Q3)保険金はいつまで請求できますか?
A)「請求権が発生した時の翌日から3年が経過すると請求権は消滅します」
保険金の請求期限は法律で3年と定められている。したがって房総半島の台風15号の被害者は、今年9月までに申請する必要がある。
Q4)必要書類を提出してから保険金支払いまでどの程度かかりますか?
A)「被害の規模によりご請求が集中した場合、必要書類をご提出いただいてからお支払いまで10日~2週間のお時間をいただくことがあります」
保険は契約の補償開始日から効力を発揮する。
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保険というともったいない気もするが、被害が発生してから悔やんでいる人の声を何人も聞いてきた。住む場所の災害リスクに応じた火災保険を選ぶのは基本だが、何事も転ばぬ先の杖だ。