鈴木エイト氏が語る旧統一教会と政治家の“ズレ”…本質は「社会の見方が変わっただけ」

公開日: 更新日:

鈴木エイトさん(ジャーナリスト)

 安倍元首相銃撃事件の発生から2カ月。統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と政治、とりわけ自民党との癒着を知らぬ人はいなくなった。ともに火消しに必死だが、底なし沼の様相だ。一連の報道をリードしてきたのがこの人。20年にわたる統一教会との攻防、そして現状について聞いた。

 ◇  ◇  ◇

 ──モーレツな世間の風当たりに自民党も統一教会も大揺れです。自民党は全国会議員に教団との絶縁を求めてはいますが、いまだ調査に乗り出さず、議員の「点検」の「集約」で幕を引く構えです。

 茂木幹事長名で議員に配布された2枚のペーパーの1枚目で「党として組織的な関係は一切ないことは既に確認済み」とクギを刺し、2枚目にまとめられた質問はたった8項目。「秘書などのスタッフ派遣を受けているか」「便宜を図ったことがあるか」「表に出せない資金提供を受けたことがあるか」「当局の捜査に待ったをかけたことがあるか」──など、聞くべきことが設問にない。自由記述欄もない。質問を超える報告は一切するな、組織性をにおわせることは決して書くな、と枠にはめ込んでいます。

 ──本気度の低さは隠せません。

 統一教会との関わりが浅い議員については、この報告で終わりにしていいとは思います。ですが、関係が深いほど、自分の首を絞めるようなことを言わないし、言えない。欺瞞に満ちています。

 ──積極的な情報公開や後追い報道などにより、自民党国会議員の100人以上が統一教会と関わりを持っていることが判明。参院選で教団の支援を受けた井上義行議員は「賛同会員」をやめたと発表しましたが、スパッといけるものでしょうか。

 萩生田政調会長の対応が典型的です。当初は「適切な対応をしていきたい」などと言葉を濁し、追い込まれて「教団との関係は断つ」と修正し、ゴマカシを重ねている。教祖の妻を「マザームーン」と呼ぶ山本朋広衆院議員、イベント出席でネパールへ飛んだ山際経済再生相にも言えることですが。萩生田氏の場合、現役信者も関係を証言しているのがポイントです。

 ──2003年に衆院議員に初当選する以前の八王子市議時代から「教団と付き合いがある」という証言ですね。

 現役信者は統一教会からある程度コントロールされている。通常、マイナスになることは口外しない。なのに、なぜか? 教団の狙いは体制維持。宗教法人解散命令の請求に発展しないよう取り計らってくださいよ、というメッセージが込められている。さもなければ手持ちのカードを切る、ということでしょう。

 ──萩生田政調会長は文教族の代表格です。カードというのは?

 教団は教会に出入りする萩生田氏の映像なんかも撮っているはずです。関わりを示す証拠として。もっとも、やり過ぎて政治生命を終わらせてしまったら共倒れになる。首根っこを押さえているのが今の状態です。萩生田氏は表では「関係を断つ」と言っていますが、裏で教団側と話し合った上で、カタをつけようとしている形跡があります。

 ──不利な情報が出てこなければ手打ち、出てきたら関係揺らぎのサインということですか?

 そうです。自民党の政調会長は党の政策を取りまとめ、政府に強い影響力を持つ。要職の地位を維持した上で寄与してもらうのが統一教会にとってベスト。本来、疑惑の中心は安倍元首相ですが、亡くなった。今後は元首相におっかぶせて逃げようとする議員が出てくるでしょう。菅前首相は追及されていませんし。

■コンビニ感覚で使い、使われてきた

 ──山際大臣や山本議員は菅前首相のお膝元でもある神奈川県が地元です。

 山際氏は09年の落選で後援者が離れて統一教会とつながり、後援会は教団丸抱え、事務所スタッフはほぼ教団関係者だという情報がある。ワイドショーで「山際事務所に統一教会関係者がいるという情報がある」とコメントしたら、クレームをつけてきたようですが、裏付け情報は今後も出てくると思います。山本氏についてもしかりですが、コンビニ感覚で互いに気楽に使い、使われてきた。事件発生まで非難されなかったので関わりが問題なのではなく、社会の見方が変わっただけだと捉えているフシがあります。

 ──ズレはそこですか。

 統一教会がメディアに圧力をかける理屈もそこなんです。反社会的団体とみなさず、普通に扱っていたじゃないか、と。それはそうなんですよね。関連団体が主催する「ピースロード」なんかは地方局が後援した例はザラにある。正体を隠していたのだから仕方ない面はあるし、問題が掘り起こされてから教団を追及することに矛盾はない。統一教会が鬼の首をとったように「関わりを公表する」と大騒ぎするのはお門違い。だいたい、都合が悪くなるとつじつま合わせに走る組織なんです。

 ──というと?

 21年9月に教団のフロント組織「UPF」(天宙平和連合)が主催したイベントに安倍元首相がビデオメッセージを寄せた件をめぐり、1カ月後に統一教会本部で行われた日曜礼拝でUPFジャパンの梶栗正義議長が手柄話を披露したんです。「8年弱の政権下にあって6度の国政選挙において私たちが示した誠意というものも、ちゃんと本人が記憶していた」と。梶栗氏は教団の政治団体「国際勝共連合」の会長も兼務しています。

■関連キーワード

最新のライフ記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 暮らしのアクセスランキング

  1. 1

    斎藤元彦氏がまさかの“出戻り”知事復帰…兵庫県職員は「さらなるモンスター化」に戦々恐々

  2. 2

    立花孝志氏『家から出てこいよ』演説にソックリと指摘…大阪市長時代の橋下徹氏「TM演説」の中身と顛末

  3. 3

    立花孝志氏の行為「調査要求」オンライン署名3万6000件に…同氏の次なるターゲットは立憲民主党に

  4. 4

    首都圏の「住み続けたい駅」1位、2位の超意外! かつて人気の吉祥寺は46位、代官山は15位

  5. 5

    別の百条委メンバーも兵庫県知事選中に「脅迫された」…自宅前に県外ナンバーの車、不審人物が何度も行き来、クレーム電話ひっきりなし

  1. 6

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏圧勝のウラ パワハラ疑惑の前職を勝たせた「同情論」と「陰謀論」

  2. 7

    シニア初心者向け「日帰り登山&温泉」コース5選 「温泉百名山」の著者が楽しみ方を伝授

  3. 8

    斎藤元彦知事に公選法違反「買収」疑惑急浮上しSNS大炎上!選挙広報のコンサル会社に「報酬」か

  4. 9

    “令和の米騒動”は収束も…専門家が断言「コメを安く買える時代」が終わったワケ

  5. 10

    吉田皇嗣職大夫 “灘高卒の超秀才”も悠仁さまの受験アドバイザーになりきれず…最近の推薦入試に疎かった?

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    元グラドルだけじゃない!国民民主党・玉木雄一郎代表の政治生命を握る「もう一人の女」

  2. 2

    深田恭子「浮気破局」の深層…自らマリー・アントワネット生まれ変わり説も唱える“お姫様”気質

  3. 3

    火野正平さんが別れても不倫相手に恨まれなかったワケ 口説かれた女優が筆者に語った“納得の言動”

  4. 4

    粗製乱造のドラマ界は要リストラ!「坂の上の雲」「カムカムエヴリバディ」再放送を見て痛感

  5. 5

    東原亜希は「離婚しません」と堂々発言…佐々木希、仲間由紀恵ら“サレ妻”が不倫夫を捨てなかったワケ

  1. 6

    綾瀬はるか"深田恭子の悲劇"の二の舞か? 高畑充希&岡田将生の電撃婚で"ジェシーとの恋"は…

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    “令和の米騒動”は収束も…専門家が断言「コメを安く買える時代」が終わったワケ

  4. 9

    長澤まさみ&綾瀬はるか"共演NG説"を根底から覆す三谷幸喜監督の証言 2人をつないだ「ハンバーガー」

  5. 10

    東原亜希は"再構築"アピールも…井上康生の冴えぬ顔に心配される「夫婦関係」