「桜田門外の変」と近江牛…井伊直弼が討たれたのは「食べ物の恨み」説ってホント?
再三に渡る斉昭からの要請にも井伊は一向に応じず、遂には徳川斉昭自らが江戸城で井伊に懇願したものの、嘲弄されて断られてしまいます。この井伊の不遜な態度に、家来であった水戸浪士たちは、主君に大恥をかかせたと激怒しました。桜田門外の変は、井伊に対して、水戸浪士たちが行った復讐劇である、という俗説です。
ただ、水戸の庶民は、「徳川斉昭の肉の怨みを藩士が討ち晴らした」と思っていたようで、 この事件を「すき焼き討ち入り」とか「御牛騒動」と呼んだと言われています。 この事件から、近江牛は「大老の首が飛ぶほど美味い牛」と詠われたりもしました。まんざら嘘だと決めつける話でもなく、御牛騒動で調べれば出てきます。玉蟲左太夫が記した「桜田騒動記」にはこんな句も。「大老が牛の代わりに首切られ」…… 真偽の程はわかりませんが、「食べ物の恨み」って恐ろしいという話ですね。それだけ近江牛が美味しいということでしょう。
▽小関尚紀(こせき・なおき)焼肉作家。お肉博士1級。焼肉店には年間100店舗以上通う。MBA。海外渡航60カ国。 焼肉好き伝説の番組BS朝日『美女と焼肉』(2022年3月終了)の初期からレギュラーだった。著書『焼肉の達人』(ダイヤモンド社)『世界一わかりやすいゲーム理論の教科書』(KADOKAWA)