教育社会学者・内田良氏 教員のタダ働きに甘える“学校依存社会”に警鐘
財務省は教育分野にしかるべき予算を
──そもそも予算が厳しい状況で、文科省は教員の働き方改革に抜本的な手を打つことができないでいる。NHKが教員の現状について「“定額働かせ放題”とも言われる」と報道したところ、文科省が「一面的な報道」だと抗議し、物議を醸した。
「文科省は、教員のなり手不足に最も頭を悩ませている。打つ手がない中で、少しでもネガティブなイメージが広がらないように、苦肉の策として今回のような行動に出たのだと考えられます」
──教育現場はすでに崩壊していると、内田教授は警鐘を鳴らす。
「現場では人手が全く足りておらず、教員は本分である授業の準備に時間を割けないでいます。校長先生などは、教員の補充のため『どこかに来てくれる教員はいないか』と、片っ端から電話をかけている状況。採用試験の倍率はあらゆる地域で急低下しており、教員免許を取得する要件が緩和されるなど、今やなりふり構わず教員を採用せざるを得なくなっている。そのため、すでに教育の質は担保できなくなってきています。いま一度、国に問いかけたいのは、学校がこんな状態でいいのかということです。未来を担う人材を育てるという重要な役割を持つ教育分野に、しかるべき予算を回すべきです」=おわり
(聞き手=橋本悠太/日刊ゲンダイ)
▽内田良(うちだ・りょう)1976年、福井県生まれ。名古屋大学大学院教授。専門は教育社会学。学校リスク(事故や長時間労働など)の調査・研究、啓発活動を行っている。