「バレたら、一生終わり」義弟との情熱的な密会。介護で疲弊する中、身も心も慰められて… #2
これまでのあらすじ
【不倫依存~婚外恋愛を謳歌する男女】
直美さん(45歳主婦/子供ナシ)は、水商売から保険会社を経て、34歳のときに資産家の勝久さん(55歳)と結婚。しかし、結婚生活は幸せとは言いがたかった。義両親は優しかったが、勝久さんは資産を守るため、直美さんには「月に4万円」しか小遣いを渡さないケチ男のうえ、家事は任せっぱなし。
次男の嫁である義妹からは「金や遺産目当て」と罵られる始末。
何よりもつらかったのは、不妊治療を続けても子供ができず、45歳になったのを機に諦めたタイミングで、義妹の娘が「授かり婚」で子供を出産したことだ。両親は「ひ孫ができた」と大喜びだったという。
そんな時、いつも優しく接してくれる夫の実弟・浩介さん(50歳水道修理業/バツイチ)と男女の関係になってしまい…。
気になる続きの前に、第1話はコチラからお読みいただけます。
ホテルの駐車場で待ち合わせ
直美さんは語る。
「浩介さんに告白された日を境に、私の生活は一変し、翌週にはラブホテルで男女の関係になりました。人目につかないよう、実家から離れた新宿区のラブホです。万が一のことを考え、それぞれの車で新宿に向かい、ホテルの駐車場で待ち合わせました。
同居する義両親や夫には、『介護で困っている知人の手伝いで、給料ももらえるから』と嘘をつきました。浩介さんは営業先から直帰と言ったようです。身勝手で冷淡な一面のある夫と違って、浩介さんは他人に配慮できる優しい男性。それでいて情熱的に私を愛してくれて…。
一度関係を持ってしまうと、私のほうが夢中になって、彼から離れられなくなってしまったんです」
直美さんは困ったように苦笑する。幸せだが「バレたら、人生終わり」と、不安と隣り合わせだという。
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2人だけの晩酌
「浩介さんは週に2~3日は実家の夕食に来てくれるので、会えるのは嬉しいのですが、ふとした瞬間、私は彼の背中に触れそうになって…慌てて手を引っこめたことが何度もありました。
そして、食後には待ちわびたようにキッチンテーブルで2人だけの晩酌です。
2人きりなので、この時ばかりは肩を寄せ合いながら、甘い会話をしました。ホテルでの出来事を話したり、ちょっとセクシーな話題で盛りあがったり…(笑)。
ただ、離婚した妻…私にとっては小憎らしい義妹の話題も出ましたよ。浩介さんも、気の強い奥さんの尻に敷かれて大変だったようです。
――妻には尻に敷かれっぱなしだったからな…直美さんも、かなりキツイことを言われたんじゃないか?
――ええ…実は『遺産目当ての直美!』とか『子供も産めない役立たず!』と罵られてたの。
――そんなひどいことを…元夫として謝るよ。申し訳ない。
――謝らないで。あの人がいなくなったおかげで、浩介さんと結ばれたんだから、今となっては感謝しなくちゃ。
いつしか涙が…
私は精いっぱいの笑顔を作りました。
――アニキも悪いヤツじゃないんだけど、子供のころから『長男として、家と財産を守れ』って言われて育ってさ…だから金に細かいんだよ。直美さんと結婚する前に何度も見合いをしたんだけれど『金がかかりそうな女とは結婚しない』と譲らなくて。
――そうだったのね。あの人…あまり自分のことは話さないから。
――長男としてのプライドがあるんじゃないかな。僕や友人にも弱みを見せないタイプだし。僕は次男だから、わりと自由に育てられた。
――だから浩介さんは優しいのね。
――ははっ、直美さんは特別な人だから。
――ありがとう…私も浩介さんは特別な人。
――アニキには悪いけど、直美さんを思う気持ちは抑えられない。
――私も…浩介さんが好き…でも、この幸せがいつまで続くのかと思うと怖くて…。
話しながら、私はいつしか涙を流していることに気付きました。
決して許されない恋愛。義弟をこんなにも好きになってしまうなんて…同時に、夫や義理の両親も裏切っていることに申し訳なさも募る一方で…」
介護で見も心もすり減って
直美さんは唇を噛みしめた。
「最近は義父の認知症が進んで、対応が大変なんです。オムツ替えは慣れましたが、朝の3時にたたき起こされて『朝メシはまだか?』と怒鳴るんです。私が『朝食は7時からですよ』と言っても、『とっくに過ぎてるじゃないか!』と怒り狂ってしまって…。
腰の悪い義母は、義父とは別な部屋で寝ており、起こすのはためらわれました。夫にも対応を求めましたが、『家のことは直美に任せているんだから、起こさないでくれ』の一点張り。もう体も心も疲弊しています」
夫が疑い始めた?
今は唯一の救いが、浩介さんとの逢瀬だという。
「浩介さんは『僕も水道修理の仕事を減らして、両親の介護を手伝おうか?』と言ってくれたのですが、断りました。一度だけ、夫が『浩介は離婚してから、やたら実家で夕飯を摂るようになったな。がめつい嫁と別れたのはいいけど、同居する孫の育児を手伝わなくていいのか?』と、怪訝な顔をしたことがあったんです。
その時はドキッとしましたね。私は『授かり婚とはいえ、まだ新婚なんだから、大丈夫だと思うわよ 』と明るく告げたのですが、少しだけ怪しんでいるようにも見えて…」
深夜に義父がリビングに
そんな折、恐れていたことが起こった。
「ある夜、いつものように浩介さんと夕食後にキッチンで晩酌をしていたんです。その日はお酒がすすんで、午前1時を回っていました。
――昨晩、夢に直美さんが出てきたんだ。すごく嬉しくて…でも、朝、目覚めて夢だと知って、空しくなった…。
浩介さんがしんみりと告げてきたんです。
――嬉しい。私も寝る前はいつも浩介さんの温もりを思い出しているの…。
私も思いをこめて、切なげな笑みを浮かべました。
――1泊だけでもいい。旅行に行けないだろうか?
――無理よ。お義父さんやお義母さんの介護もあるし、だいいち勝久さんが許してくれないわ。
互いの手が重なろうとしていた、まさにその時、
――お前ら、何してるんだ!
唐突な怒声に振り向くと、パジャマ姿の義父が、仏頂面で立っていたんです」
続きは次回。
(蒼井凜花/作家・コラムニスト)