業界売上高で首位も 不動産事業に転換したJフロントの将来
「百貨店自体、もはや過去の遺物なのかもしれない」と冴えない顔で語るのは三越伊勢丹の社員。同社は19年度決算で業界売上高トップの座から陥落。最終損益も111億円の赤字に陥った。
「不振の原因は従来の業態にこだわりすぎているからだが、昔ながらの百貨店であってほしいという気持ちもどこかにある」
三越伊勢丹に代わり首位に躍り出たのは大丸松坂屋を擁するJ・フロントリテイリング(以下Jフロント)。三越伊勢丹社員は「あそこは百貨店ではなく不動産業者」と揶揄する。
Jフロントの百貨店部門の売り上げは全売り上げの63%まで減少。基幹店だった銀座松坂屋はテナントビルのギンザシックスに建て替えられ、直営売り場はどこにもない。
「大丸心斎橋店本館を86年ぶりに建て替えるなど、百貨店事業にも力を入れている」とJフロント社員は反論するが、同店本館は食品売り場の一部のスペースを除きテナントだらけ。南館に至っては、家電量販店の売り場が大半を占めている。
今年5月の人事でも、不動産部門に傾斜する姿勢が見て取れた。8年前にJフロントに吸収合併されたパルコ出身の牧山浩三氏が常務から専務に引き上げられたのだ。