高齢化ニッポンの新年相場「賃上げ→消費支出増加→物価上昇」の経済好循環は難しい
大企業に勤める労働者は、全体のひとにぎりで、自営業者や多くの年金生活者も賃上げは無縁である。人口問題研究所によれば、全人口に占める65歳以上(75歳以上)の構成比は、1965年は6.3%(1.9%)、90年に12.0%(4.8%)、2020年に28.7%(14.9%)であり、これらの高齢者は、基本的に就労していない。これでは、「賃上げ→消費支出増加→物価上昇」の経済の好循環は難しい。
岸田政権は昨年12月に24年度の公的年金支給額を引き上げる方針を固めた(今年1月に正式決定か)。物価上昇を踏まえた措置で、プラス改定は2年連続。ただ、将来世代の給付水準を確保するため、今の高齢者への年金額を抑制する「マクロ経済スライド」を発動する見通し。年金の伸びは物価上昇に追い付かず、2年連続で実質的に目減りとなる見込みで高齢者の消費支出は伸びないだろう。
現役世代は、賃金が増えても、日銀の「ゼロ金利」政策の維持という現実を受け、先行きに不安を抱える。「生活防衛」で消費よりも貯蓄を優先すれば、消費支出は増加しないというパラドックスだ。
経済の好循環は、政権与党の国政選挙に向けた最重要課題であるが、大統領選を控えた米国、そして日本も「迷走」が予想される。「投資」に際しては、落ち着いてことの成り行きを見極めたい。