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山田隆道作家

1976年、大阪生まれ。早大卒。「虎がにじんだ夕暮れ」などの小説を執筆する他、プロ野球ファンが高じて「粘着!プロ野球むしかえしニュース」などの野球関連本も多数上梓。各種スポーツ番組のコメンテーターとしても活躍中。

阪神近本がセ首位11盗塁 とんだ“外れ外れ1位”がいたものだ

公開日: 更新日:

■「赤星2世」という酷でむちゃなハードル

 それでも在阪マスコミは近本の俊足ぶりに注目して「赤星憲広2世」と打ち出していたが、個人的にはそれも厳しいだろうと思っていた。現役時代の赤星はちょっとやそっとのスピードスターではなく、投手のクイックモーション技術が進んだ現代プロ野球において、5年連続盗塁王、うち3年連続60盗塁以上を記録したモンスターだった。

 この60盗塁という数字だが、平成に入って以降では赤星の他に松井稼頭央本多雄一の2人しかクリアしていない。しかも、2人ともクリアしたのは1回だけだから、60盗塁以上を3年連続で記録した赤星がいかにすさまじかったかわかるだろう。希少性という意味では、3年連続50本塁打以上を記録した長距離砲くらいの価値だ。

 だから、赤星2世なんてそもそも酷でむちゃなハードルなのだ。外れ外れ1位のルーキーに託す期待としてはあまりに重過ぎる。その重さでつぶれていったルーキーが過去に何人いたことか。

 しかし、いざ蓋を開けてみると近本はあっさり外野のレギュラーを獲得し、打率3割前後をキープし、現在リーグトップの11盗塁を記録。これはルーキーイヤーに打率.292、39盗塁で新人王に輝いた赤星と遜色ない、いや、序盤としては赤星以上の成績だろう。

 一般的に近本のような小兵タイプは派手さという点で目立ちにくい傾向にあるが、赤星という稀有なモンスターと比較されながら及第点の成績を残していることは特筆に値する。とんだ外れ外れ1位がいたものだ。

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