「スカウトは本音を言わなきゃ」部長の気遣いに救われた

公開日: 更新日:

 そいつに「だって先輩が引き合いに出したいまの4番って部長が推して取った選手でしょう。なのに、さも、自分が見つけてきたみたいに言うもんだから……」と言われて、ハタと気付いた。担当したのは確かにオレだけど、その選手は担当地区にいただけ。自分はむしろ獲得に消極的だったことを思い出したんだ。

 部長は会議でニヤニヤしながらオレの話を聞いてたけど、ホント、穴があったら入りたいって心境になった。

 後日――。部長とメシを食う機会があったんで、さすがに頭を下げた。いまの4番をさも自分が発掘したみたいな言い方をして申し訳ありませんでしたってね。

 すると部長は「そうやって物事を自分の都合のいいようにとらえて前を向くおまえの性格は悪いことじゃないんだぞ」って、ケタケタ笑いながらこう言った。

「スカウトはたいてい1年契約だ。失敗が続くとエラいさんの方ばかり見るようになり、ヘタなこと言ってまた裏目に出たらどうしよう、契約してもらえないんじゃないかって、消極的になっちまう。けれども、スカウトが本音を言わなくなったら、球団にとってはマイナスだからな」

 いつの間にか4番はオレが評価したと本気で思い込んでいた自分の性格が怖くなったが、部長の言うことを聞いて救われた気持ちになったのも事実。今度、後輩に会ったら、一度や二度の失敗なんて気にするな! 自分の意見は臆せず言わなきゃ意味がないぞって、言おうと思った。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ロッテ吉井監督が佐々木朗希、ローテ再編構想を語る「今となっては彼に思うところはないけども…」

  2. 2

    20代女子の「ホテル暮らし」1年間の支出報告…賃貸の家賃と比較してどうなった?

  3. 3

    【独自】フジテレビ“セクハラ横行”のヤバイ実態が社内調査で判明…「性的関係迫る」16%

  4. 4

    「フジ日枝案件」と物議、小池都知事肝いりの巨大噴水が“汚水”散布危機…大腸菌数が基準の最大27倍!

  5. 5

    “ホテル暮らし歴半年”20代女子はどう断捨離した? 家財道具はスーツケース2個分

  1. 6

    「ホテルで1人暮らし」意外なルールとトラブル 部屋に彼氏が遊びに来てもOKなの?

  2. 7

    TKO木下隆行が性加害を正式謝罪も…“ペットボトルキャラで復活”を後押ししてきたテレビ局の異常

  3. 8

    「高額療養費」負担引き上げ、患者の“治療諦め”で医療費2270億円削減…厚労省のトンデモ試算にSNS大炎上

  4. 9

    フジテレビに「女優を預けられない」大手プロが出演拒否…中居正広の女性トラブルで“蜜月関係”終わりの動き

  5. 10

    松たか子と"18歳差共演"SixTONES松村北斗の評価爆騰がり 映画『ファーストキス 1ST KISS』興収14億円予想のヒット