著者のコラム一覧
鈴村裕輔野球文化学会会長・名城大准教授

1976年、東京都出身。法政大学博士(学術)。名城大学外国学部准教授。主な専門は政治史、比較思想。野球史研究家として日米の野球の研究にも従事しており、主著に「MLBが付けた日本人選手の値段」(講談社)がある。スポーツを取り巻く様々な出来事を社会、文化、政治などの多角的な視点から分析している。アメリカ野球学会会員。

政界と球界における ガラスの天井を破った女性の立ち位置

公開日: 更新日:

 礼を尽くして招聘した人物であっても実績が伴わなければ半年で地位を失うのが大リーグだ。そのような中で、シカゴ大学を卒業して90年にホワイトソックスに採用されて以降、一貫して球界で経験を積んできたという一点だけでも、アンの能力の高さが分かる。

 しかも、アンをヤンキースに招いたのが、前任のGM補佐であり、30歳という当時史上2番目の若さでGMとなったブライアン・キャッシュマンであった。「30歳のGMに29歳のGM補佐」という取り合わせは、アンに対する周囲の期待がどれだけ強かったかを示している。

 このように見れば、「米国史上初の女性副大統領」となったハリスと「北米プロスポーツ史上初の女性ゼネラルマネジャー」のアンとは、あたかも「ガラスの天井」を壊す象徴かのようである。

 だが、安定感はあっても大衆的な支持に乏しいバイデンが、急進的な政策によって支持を集めるハリスの人気を取り込む目的で副大統領の人選を行った点には注意が必要だ。

 もちろん、マーリンズも「女性GM誕生」という話題によって人々の注目を集めるという意図がなかったわけではない。

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