東京五輪を通して日本サッカーに「頼りになるストライカー不在」という課題を突き付けられた
東京五輪の3位決定戦でメキシコと対戦した日本U-24代表の選手たちは真っ白のユニフォーム、パンツ、ストッキングでピッチに登場した。
左胸にはJFA(日本サッカー協会)のエンブレムはなく、シンプルに「日の丸」のマークが入っているだけ(右胸にアディダスのロゴ)。1968年メキシコ五輪の3位決定戦で開催国メキシコと戦い、2-0で勝利して銅メダルを獲得した時のユニフォームにそっくりだった(この試合はパンツだけ色付き)。
半世紀以上前の記憶を懐かしく思い出しながら「いつまでも53年前のメキシコ五輪の銅メダルが話題になっているようではダメ。日本サッカーのために次のページに移らないといけない」とキックオフ前につぶやいた。
前半を0-2で折り返し、後半の早い時間帯に日本が1点を返していたら、勝負はどっちに転んだか、分からなかったと思う。しかし、後半13分にセットプレーから3失点目を喫してしまった。これが痛かった。
後半17分に投入されたMF三笘薫が、何度も鋭いドリブル突破で相手守備陣を翻弄。33分に一矢を報いてくれた。せめて後半の頭から起用されたらーーと思わないでもなかったが、選手起用やさい配について、とやかく言うつもりはない。チームのこと、選手のことを一番よく知っている現場スタッフが決断することだからね。
決勝トーナメントに入ってから、日本サッカーの抱えている<決定力不足>という問題点が顕在化してしまった。準々決勝はニュージーランドと0-0からPK戦にもつれ、準決勝はスペインと戦って0-1で敗れた。そして3位決定戦ではメキシコに常に先手を握られ、1-3のスコアでメダルを逃した。
久保建英、堂安律という「素晴らしい出し手」がいるのに…
日本には久保建英、堂安律という素晴らしい「パスの出し手」がいるのにも関わらず、相手ゴール前できっちり「ゴールを決めてくれる受け手」が見当たらなかった。
グループリーグでは久保が3試合連続ゴールを決めてくれた。そのおかげもあって日本は3戦全勝(7得点・1失点)とチームがうまく回っていた。しかし、決勝トーナメントに入ると久保は相手から厳しいマークを受け、なかなかゴールに繋がるようなシュートを打たせてもらえなかった。
久保自身はストライカーではなく、あくまでゴールをお膳立てするパサーということ。彼にチャンスメークからゴールまで期待するというのは、無理な注文と言うしかないやろ。
今の選手は、50年前と比べるとテクニック面で格段にレベルアップしている。足元の技術は素晴らしく、どの国、どのクラブと対戦しても、ある程度はボールを互角に回すこともできる。でも、頼りになるストライカーが、結局いなかったということや。
53年前はメキシコにゲームの流れを持っていかれ、およそ7対3の感じで押されていた。まずは固く守り、チャンスを見計らってカウンターを仕掛けた。中盤に上手な出し手が揃っていたのも心強かった。
相手ゴールに近いところには私、杉山(隆一)さんと<点の取れる受け手>がいた。前線と中盤と最終ラインの選手が、課せられた役割を全うすることでメダルを獲得できた。
今の日本サッカーに足りないものが一番たくさんあるのは、やはり前線と言わざるを得ない。ストライカーに求められる能力を上げていくために一体全体、何をどうすればいいのか? 東京五輪の戦いを通して突き付けられた課題を日本サッカー全体で考えていけないといけない。
(構成・日刊ゲンダイ)