日米20球団が雄星と面談 阪神は松坂の甲子園時との比較データを見せて説得した
最速154キロの直球と打者の手元で鋭く曲がるスライダー。投手が補強ポイントだった阪神は、早い段階で花巻東の左腕・菊池雄星(ブルージェイズ)の1位指名を決めていた。しかし、ドラフト前に騒動が起こった。
日本のプロ野球のスカウトは直接選手と話をしてはいけない決まりがある。ただ、メジャーのスカウトには当時、そのルールは適用されていなかったため、直接話を聞いていた菊池は、いつしかメジャーへの思いを募らせ、高校卒業後に米球界入りを希望した。慌てた日本球団と米国のスカウトによる面談が2009年10月に行われることになった。国内12球団、大リーグ8球団。日米20球団が面談のため、岩手の花巻東を訪れた。
菊地敏幸・東日本統括スカウトとともに面談に臨むにあたり、私はある資料を持参した。横浜で1998年の甲子園で春夏連覇を達成した松坂大輔(当時レッドソックス)の甲子園時の投球と比較したデータである。防御率や被本塁打数など、ほとんどの成績が松坂の方が上回っていたことを提示。「あの松坂でさえ日本のプロ野球を経由してからメジャーに行ったんだよ」と説得した。菊池は最終的に日本球界を選んだ。