湘南ベルマーレが旗を振る「BAFA」はどうなった? 設立から半年、リアルな現状を聞いた
Jリーグが推し進める「アジア戦略」がスタートして2022年で10年が経った。まるで金銀財宝が眠っているかの如く、数多くのJクラブが東南アジアを目指し、パートナーシップ締結という名の宝探しに明け暮れた時代を懐かしくも感じるが、眩い宝石を掘り当てることに成功したクラブは極めて少ない。パートナーシップ締結や2クラブ間で結ぶ業務提携が主流だったが、旧来とは違った手法でアジアへ向けて再挑戦を挑むクラブがある。
■BAFA設立発表から半年が経過
湘南ベルマーレは、2022年1月に「ベルマーレ・アジア・フットボール・アライアンス」(BAFA)の設立を発表した。
アライアンスにはボンケットFC(カンボジア)、武漢スリータウンズ (中国)、スデヴァ・デリFC (インド)、FCチャンタボリー (ラオス)、ダヴァオ・アギラスFC(フィリピン)、クランタンユナイテッドFC(マレーシア)、ノンブア・ピッチャヤFC (タイ)が加盟した。
このほかにベトナムとインドネシアのクラブとも話を進めているようだ。
設立発表から半年、彼らの動向に注目してきたが、これといった活動は耳には入ってこない。多くの先人たちがそうだったように、自然消滅してしまったのか?
リアルなところを聞きたくて、神奈川・平塚にある湘南ベルマーレへのオフィスを訪ねた。話を聞かせてくれたのは、関口潔氏(テクニカルダイレクター兼国際事業マネージャー)だった。
■アジアサッカーと関わるきっかけ
──まず関口さんがこれまで歩んでこられた海外での歩み、そして湘南ベルマーレに辿り着いた経緯を聞かせてください。
「JFA(日本サッカー協会)が行っているアジア貢献事業で2010年から北マリアナ諸島(A代表監督)へ、2012年からはラオスサッカー連盟(技術委員長/U-16監督)に、また2014年に再び北マリアナ諸島に赴きました。そして帰国後の2017年から湘南ベルマーレで仕事しています。特にラオスFAでアンダーカテゴリーを見させていただいた中、アジア各国へ遠征に行った際にポテンシャルの高さを感じたことが、帰国後もアジアサッカーと関わる一番のきっかけになったと思っていますし、このBAFAの活動へも繋がっています」
──そのBAFAですが、先ほどから仰っているように「バーファ」と読むのですね?
「そう言っているのは私だけですけどね(笑)」
■アジア市場を取りにいかないとクラブの発展はない
──まるでアメリカの巨大IT企業連合をも連想させるアライアンスですね。BAFAの計画立案は、関口さんのアイデアなのでしょうか?
「はい。正直、現状ではまだ、実働部隊は私しかいませんので」
──ではBAFA設立に至った経緯を聞かせて下さい。
「そもそもJリーグの理念に国際貢献というものが書かれており、湘南ベルマーレとしてずっとやろうという意思を強く持っていた中、何をやったら良いのか、またそこへ踏み込んでいくタイミングがなかったんだと思うんです。『アジア市場を取りにいかないとクラブの発展はない』と考えていた水谷(尚人/株式会社湘南ベルマーレ代表取締役社長)に、そこを一歩進めたいという思いがあり、2017年から私がお世話になることになりました。なぜこのタイミングだったのか、というところですが、2018年にはフィリピンのクラブ(ダヴァオ・アギラスFC)とスクール事業を始めていたんです。2019年にもインドネシアでスクールの立ち上げを準備していたのですが、両方ともコロナ騒動で止まってしまっていました。そして2021年秋くらいからそろそろ再開していこうよ、という話を始め、今季初めにリスタートしたという流れになります」
■リーグやクラブで培ってきた経験を寄与
──2022年1月の設立発表から7カ月が経ちました。活動内容を聞かせて下さい。
「実際、何が出来ているかというと、まだそれほど出来ていないんです。BAFAとしてやっていきたいことは、大きく分けて<トップチームの交流><アカデミーの交流><各種情報の共有><ビジネス部門の協力>の4つです。市場ニーズのある日本人選手や指導者を送りたい、というのもあります。昨季、我々はJリーグ最優秀育成クラブ賞をいただきましたが、ベルマーレのアカデミーでは何をやっているのか、BAFA加盟クラブが興味を持ってくれていることのひとつです。これまでリーグやクラブで培ってきた経験を寄与し、各クラブに貢献出来るだろう、と思っています。また我々は毎年、11歳以下の大会『コパ・ベルマーレ』を開催してきた実績もあります。アンダーカテゴリー間での交流もやっていこう、と。掲げた4つの提携項目の中でも特に<育成の部分>をより強くやっていきたいというところです」
──湘南ベルマーレがイニシアティブを握る「アライアンスリーダー」ということでしょうか?
「はい、そうですね。BAFAとして何をやっていこうか、我々が先頭に立って立案しています。現在、プランとしてあるのは、パートナークラブへ日本人監督を派遣しようという動きだったり、2022年の11月に我々のトップチームがタイ、カンボジア、マレーシアを廻るASEANツアーができないか、模索しているところです」