「弱くもならなけりゃ強くもならない」凡庸なベテラン増加で思い出した元栃錦の毒舌
稀勢の里は7年かかって大関に
稀勢の里(現二所ノ関親方)は18歳で入幕しながら7年かかって大関になり、横綱昇進は30歳だった。入幕がずっと遅かったら、チャンスは何度もなかっただろう。
生身の体を激しく使う以上、入門年齢と引退年齢が3、4年ずつ上がっても全てがそのままスライドするわけではない。若々しく個性的ならいいが、凡庸なベテランが増えれば、活気は減退する。新鋭たちもまた、ベテランと同じことをしていては短い「旬」を逃し、自分も同化していく。
若隆景、豊昇龍、霧馬山、琴ノ若、若元春らが関門を通過していけるか。各種資格の取得や年寄名跡などの問題を改善し、10代の若者が飛び込める相撲界になれるか。
あの時は記事にしなかった春日野理事長の毒舌が、危機感とともに思い出される。当時現役だった親方は「今はそういう力士が何人もいる」と苦い顔をした。
▽若林哲治(わかばやし・てつじ) 1959年生まれ。時事通信社で主に大相撲を担当。2008年から時事ドットコムでコラム「土俵百景」を連載中。