森保Jの“不動心” イケメンDF谷口彰悟の「原点」を大津高時代の恩師が明かす
「谷口は頭も良かった」
──進路は?
「彼は頭も良かったですし、私自身もすぐにプロに行くよりは、大学で力をつける方がいいと考えていました。ちょうど私の母校・筑波大で(大学サッカー部の)先輩の風間八宏(現セレッソ大阪スポーツクラブ技術委員長)さんが監督をやっておられたこともあり、『必ず谷口を伸ばしてくれる』と信頼して送り出しました。ボールを止める、蹴るにこだわる風間さんの下で彼の技術、戦術面が飛躍的に向上したのは間違いないですね」
──その風間さんが2012年の春から川崎の監督に就任し、谷口も14年から加入しました。
「もともと川崎は、関塚隆監督が指揮していた頃から谷口に興味、関心を持っていただき、高校在学中に練習参加に呼んでくれたという経緯がありました。風間さんが監督であれば、筑波大の流れをそのまま維持できる。実際、川崎入りしてからの谷口は大きく飛躍しましたね。特に成長曲線が上向いたのが、川崎の主将になってから。J王者のチームで勝ち続けるのは、相当な重圧がかかる。20年末に中村憲剛(川崎FRO)が引退した後は責任も増したでしょう。7~8月にかけてコロナ陽性者が続出しているように、コロナ禍は通常よりもはるかに難しい要素が重なる。そんな日々を通して、谷口は『自分がやるんだ』と覚悟を決めたんだと思います」
──日本代表初招集は15年でしたが定着したのは21年から。間もなく30歳という時です。
「遅咲きかもしれませんが、昨年あたりからフィジカル、メンタル面ともに本当に良い状態を保っています。DFはいろんなことを経験して学ぶこともあるので時間がかかるのかな。あれだけ真面目にひたむきにやっている男ですから、サッカーの神様は必ず見てくれている。谷口はここからですよ」
──大津高出身のW杯選手は過去3人いますが、巻以外は本大会で出番がありませんでした。谷口には何とか主力に食い込んでほしいところです。
「E-1選手権で代表での地位を1ランク上げたので9月の欧州遠征、11月のW杯本大会でどこまで調子を上げて自分を高められるか、だと思います。パスの質、精度、視野の広さが際立っていますし、川崎ではパスの供給数がトップ。ボールの置きどころがいいから効果的なパスを出せるんです。その長所は吉田麻也(シャルケ)らにも負けてはいない。『大津プライド』を忘れず、突き進んでほしいと思います」
▽谷口彰悟(たにぐち・しょうご) 1991年7月15日生まれ。熊本市出身。大津高から筑波大。2014年にJ川崎入り。17、18年と20、21年にJ1制覇。15年6月に日本代表デビュー。22年のカタールW杯最終予選で重用されて中国戦、サウジアラビア戦の連続クリーンシートでの勝利の立役者となった。身長183センチ・体重72キロ。31歳。
▽平岡和徳(ひらおか・かずのり) 1965年7月27日生まれ。熊本県宇城市出身。熊本・松橋中から東京・帝京高。3年次に高校サッカー選手権優勝。筑波大4年次に主将として総理大臣杯準優勝。卒業後は地元で教員となって93年に大津高に赴任。多くのJリーガーを輩出した。JFA技術委員、JOC強化スタッフなど歴任。2017年4月に宇城市の教育長に就任。