日本マラソン世界陸上惨敗で「致命的欠点」浮き彫り…やり投げ北口榛花の快挙でまざまざ
世陸と五輪でのマラソン惨敗は見慣れた光景
一方、北口の金メダルに沸いた10時間後の現地7時(日本時間26日14時)。女子マラソンがスタートしたが、日の丸を背負った日本勢3人は惨敗し、昨27日の男子も山下一貴(26)の12位が最高だった。
世陸や五輪の日本マラソン陣の惨敗は見慣れた光景だ。昨年の世界陸上は男女とも入賞者なし。母国開催の東京五輪も男子は大迫傑の6位、女子は一山麻緒の8位入賞が最高。日本実業団陸上競技連合が東京五輪でのメダル獲得に向けた強化の一環として、日本新記録を樹立した選手に1億円のボーナスを支給。大迫は2回の更新で2億円を手にしながら、メダルには結びつかなかった。ちなみに、世陸より重視される五輪のメダルで言えば、男子は92年バルセロナ大会の森下広一の銀、女子は04年アテネ大会の野口みずきの金が最後だ。
マラソン陣の不甲斐ない成績が続く原因は多々ある。例えば、国内マラソンのあり方だ。
今回、女子の解説をしていた00年シドニー五輪金の高橋尚子は「ペースメーカー(PM)頼りのレースだけでは限界がある」と言った。これは日刊ゲンダイが何度も指摘していることだが、国内の主要大会は必ずPMをつけて好記録を出させようとする。
一定のペースを刻むPM先導のレースばかりやっていれば、PM不在の世陸や五輪でアフリカ勢のペースの上げ下げについていけるはずがない。
元日本陸連副会長の帖佐寛章氏(現顧問)は実業団の現状に不満顔だ。
「実業団は元日の(全日本実業団対抗)駅伝がメイン。マラソン強化はおろそかになっている。かつてケニアから仙台育英に留学、トヨタ自動車九州に進み、北京五輪のマラソンで金メダルを取ったS・ワンジルはその直後、『駅伝中心の練習は合わないので、これからは駅伝がないところでやりたい』との理由で退社した。マラソンの強化を真剣に考えないと大舞台でのメダルは夢物語になる」
■五輪に出るのが最大の目標
もうひとつは意識の問題だ。ある実業団の元指導者がこう漏らす。
「今は五輪に出ることが最大の目標で、メダルを取るまでの意識は、選手にも指導者にもないに等しい。アフリカ勢を倒すための練習や指導法を考えるまでに至っていない。ケニア留学? 今でも数週間ケニアに行く選手はいても、数年間腰を据えてというのは無理でしょう。そこまで考えている選手もいないでしょう」
北口は世界の頂点を狙うためにやり投げ王国のチェコに飛んだ。18年平昌五輪女子スピードスケート500メートルで日本女子初の金メダルを獲得した小平奈緒も、ソチ五輪でメダルに手が届かず、スケート王国のオランダに単身留学し、レベルアップに励んだ。
プロ野球の名将と言われた故・野村克也氏が残した名言ある。
心が変われば態度が変わる。
態度が変われば行動が変わる。
行動が変われば習慣が変わる。
習慣が変われば人格が変わる。
人格が変われば運命が変わる。
運命が変われば人生が変わる。
「心」が変わらなければ五輪のメダルなんて遠い話。日本マラソン陣に北口の真似ができるか。