ラグビーW杯 日本代表がチリに圧勝発進も…次戦イングランド戦へ露呈した「不安と課題」
日本時間9日に開幕したラグビーW杯。10日に初戦を迎えた日本代表(世界ランク14位)は、チリ代表(同22位)を42-12で下した。前半3トライ、後半3トライを奪い、勝ち点4に加えて4トライ以上に与えられるボーナスポイント1点も獲得。幸先のいいスタートを切ったが、初出場のチリに2トライを許し、前半は接点で押し込まれるシーンも散見された。前回大会のベスト8を上回る「4強以上」の目標に向けて不安はないか。30年以上のラグビー取材歴を持つスポーツライターの永田洋光氏が斬る。
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決して万全なパフォーマンスではなかった。
1987年の第1回大会から10回連続出場のジャパンは、初出場のチリ以上に硬くなっていた。事前の強化試合で1勝5敗と結果を出せず、勝利への道筋が不透明だったことが、プレッシャーの一因になっていたのだろう。
立ち上がりに攻め込んだところでボールを失い、チリにカウンターアタックを仕掛けられて先制トライを奪われた展開は、4年前に開幕戦の緊張からロシアにトライを奪われた場面に重なった。
直後に相手の落球を拾ってアタックを仕掛け、LOアマト・ファカタバがトライを返してようやく落ち着きを取り戻したが、攻守にわたって連係の取れた動きができず、7対7の時間帯が長く続いた。
30分にスクラムからWTBジョネ・ナイカブラが、41分にファカタバがトライを追加してチリを突き放しにかかるが、後半立ち上がりに出た凡ミスがふたたび流れを悪化させ、チリの健闘を引き出す始末だ。終盤に2トライを加えてなんとか面目を施したが、日本時間18日の次戦・イングランド戦に向けて、不安と課題は解消されないままだった。
最大の不安は、前半のチリが元気な時間帯に接点で前に出られたことだ。明らかに出足の鋭さが欠けていた。イングランドは、チリを上回るフィジカルの強さを誇る。この日の前半のような防御では大きな綻びが生じることになるだろう。
力強さに欠けたのは、キャプテンのナンバー8姫野和樹が、直前に左足のケガで出場できなくなった影響も大きい。後半途中から巨漢LOワーナー・ディアンズが入るとFWが力強さを取り戻したが、この試合の最優秀選手に選ばれたファカタバやサウマキ・アマナキのような機動力を持つLOと、強さと重さを備えた姫野やディアンズのようなFWをどう組み合わせるかが、イングランド戦のキーポイントになる。