“隠し玉”森山良二を単独1位指名した86年、根本陸夫さんは阿波野、西崎との「3頭取り」を想定していた
西武は1986年ドラフトでアッと驚く指名をやってのけた。
福岡大大濠高を経て、北九州大を中退した森山良二という無名投手を1位指名した。いわゆる隠し玉である。鈴木は言う。
「西武は森山と話ができていました。大学を中退して、指名するまでの1年の間にアメリカで武者修行させたりね。でも、当初は1位指名する予定はなかったんです。ドラフト会議当日朝、某スポーツ紙に『西武隠し玉』と書かれたもんだから、1位に方針転換せざるを得なかった。この年のドラフトは、阿波野秀幸(亜大)と西崎幸広(愛工大)がいて、即戦力では森山も含めて『投手三羽ガラス』だったんですけど、ドラフト外も活用してうまくやったら、3人まとめて取れる可能性があった。根本(陸夫)さんはそこまで考えていましたね」
結局、阿波野は近鉄、大洋、巨人が競合して近鉄が当たりくじを引き、西崎は日本ハムが単独で1位指名した。異例の3頭取りはかなわなかったが、鈴木も含めた各スカウトが、根本流を駆使して選手の指名に奔走した。
鈴木は監督、管理部長を務めた根本陸夫氏の教えを要所で吸収した。人脈づくりもその一つだ。