引退決断の柔道ウルフ・アロン「『心残りはある』って言ってしまったんですけど、『やっぱりねえな』と(笑)」

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プロレスに転向?

 ──パリでは団体で銀メダルを獲得した一方、個人戦は敗者復活戦で敗れた。試合直後は「心残りはある」と話しましたが、その後の会見では「後悔はない」と。本心はどっちですか?

「発言の違いに気づきました?(笑)。試合直後はまだ気持ちの整理がついてなかったし、何か言おうと決めていたわけではなかったので、『心残りはある』って言ってしまったんですけど、冷静に考えたら『やっぱりねえな』と(笑)」

 ──敗れた直後に畳の上で大の字になって天井を見上げていた。

「やり切ったな、って気持ちにはなりました。これ以上の準備ができたのかなって思い返したときに、そうは思わなかった。僕は負けて悔しいときはもっともっと頑張れたんじゃないか、って思うときなんです」

 ──引退の時期も決めているんですか?

「10月の佐賀国スポ(国体)で初めて成年男子の部に出場して、最後に来年6月の実業柔道団体対抗大会で、所属先の『パーク24』の初優勝に貢献したいと考えています」

 ──引退を撤回する気は?

「(キッパリと)ないです!」

 ──引退後は何を? プロレス転向説もあるようですが……。

「やりたいことはたくさんあります。やることが決まったら、改めて僕の方から伝えさせていただきます(笑)」

 ──団体戦に向けて気持ちを切り替えた。

「団体戦は日本全体の戦い。メダルが取れなかったからといってモチベーションが下がると、周りの選手に伝染してしまう。逆に言うと、僕が前向きでいれば、その気持ちが伝染する。男子では年齢的に橋本壮市さん、永瀬貴規さんがいて、僕は上から3番目。結構話すタイプなので、まとめ役じゃないですけど、僕が『元気にやろう』と言えば周りも元気になると思って、臨みました」

 ──率先してコミュニケーションを図ったと。

「できるだけみんなと話すようにしていました。ただ、話し過ぎると逆に緩んでしまうこともあるので、しっかりバランスを考えて、選手によって接し方を変えたりしました。もちろん、僕も試合をやるので、自分のモチベーションも保ちながら、という感じです」

 ──個人戦でメダルを取れなかった選手は、気持ちの整理が難しい。

「特に(100キロ超級の)斉藤立は、個人戦をやった次の日に団体戦。気持ちを切り替えろ、って言ってもすぐに切り替えられないし、体もキツイ。大変だったと思うんですけど、タツルが個人戦を終えて選手村に帰ってきた時に、『明日は俺もいるからな』って言葉をかけました。少しでも張り詰めたものが緩むような言葉をかけようと、意識はしました。気休めでもいいから、という」(第2回に続く)  

 ◇  ◇  ◇

 第2回の質問は、「──斉藤選手は個人戦でメダルなしに終わり、相当思い詰めていた。普段はどんな性格ですか?」から始まる。

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