大谷がドジャースにもたらす戦力以上の「化学反応」 《チームのムードやナインの意識まで変えつつある》
メジャーリーグではしばしば「chemistry(ケミストリー)」という単語が使われる。直訳すると化学、相性、団結力、絆といったさまざまな意味を持つ言葉だが、特定の選手が加入したことによって、その選手の実力以上の効果が生じるときにも使われる。
そこへいくとドジャースは、大谷翔平(30)が入団したことで、戦力以上の化学変化が生じているのではないか。
日本時間6日にプレーオフ初戦を迎えたパドレスとの地区シリーズ。ドジャースは11年連続プレーオフ進出も、その間、ワールドシリーズを制覇したのは2020年の1度だけ。昨年も一昨年もプレーオフ初戦の地区シリーズで姿を消している。今季は特に投手陣が脆弱で、米スポーツ専門局「ESPN」の野球担当者27人中22人までが「パドレスが勝つ」と予想した。しかしドジャースは、パドレスに打ち勝って初戦をモノにした。
第1戦は案の定、パドレスに先制された。先発の山本由伸(26)が初回、マチャドに本塁打を浴びるなどヨーイドンで3失点。ワイルドカードシリーズでブレーブスに2連勝して勢いに乗るパドレスに主導権を握られたものの、二回に大谷のプレーオフ1号となる3ランが飛び出して同点に追いつく。山本は直後の三回にも2点を失って突き放されかけたが、四回に逆転。リードを保ったまま逃げ切ったのだ。
大谷はこの日、5打数2安打、1本塁打、3打点。値千金の同点3ランと逆転を呼ぶ中前打を放つなど、そのバット自体が勝利を呼んだのは間違いない。
とはいえ、「パドレス有利」の下馬評を覆し、プレーオフが苦手なドジャースの勝利を引き寄せたのは「大谷のバット以外の部分も大きい」と、特派員のひとりがこう言った。
「同点3ランの直後はバットを放り投げて雄たけびを上げ、二塁ベースを回った直後には“オレに続け!”とばかりにベンチに向かって両手を振っています。プレーオフに進めなかった過去6年分のうっぷんを爆発させたかのよう。興奮状態はピークに達していて、大谷がメジャーであそこまで感情をあらわにしたのは記憶にありません。そういった勝利への強烈な執着心や姿勢が、チーム内のムードやナインの意識まで変えつつあるのではないか。もちろん、ナインへのアドバイスも惜しまない。この日の試合中のベンチで、大谷に助言をもらって2安打を放った二塁手のラックス(26)は“ショウヘイは相手投手の投げる球の軌道なんかを細かく説明してくれるので助かる”と話していますし、大谷の後を打つベッツ(32)とフリーマン(35)のMVPコンビも、相手投手の球筋などを聞くことがあるといいますからね」