《門田博光の巻#2》深夜2時に“麻雀部屋”まで牛丼を届けに行った僕に3万円をポンと渡した太っ腹
門田博光さん(享年74)ほど、打撃の追求に熱心だった人を僕は知りません。
ティー打撃の練習でも強いこだわりがありました。地面に白線を引き、「このラインの軌道で投げてくれ」と投げ手に注文。常に実戦を意識し、外側から入ってくるボールを想定していました。
そんな門田さんに深夜、突然呼び出されたことがあります。昔の野球選手は麻雀好きが多く、門田さんもそのひとり。選手寮にも専用の部屋があり、多くの選手が夜な夜な卓を囲んでいました。午前2時、僕が寝ていると門田さんから電話があり、「おう、寝てたか? すまんな。ちょっと牛丼買ってきてくれ。4杯……いや、おまえの分も合わせて5杯な」。
お金は立て替えて、24時間営業の吉野家で牛丼を購入してから麻雀部屋へ。すると、門田さんは「ありがとうな」と、3万円を僕にそのままポンとくれました。
「いやいや! 領収書あるんで……」
「いらんいらん。取っとけ、取っとけ」
牛丼5杯で3000円もかかっていません。差し引き、2万7000円以上の臨時収入。その太っ腹には驚かされましたが、いかんせん、当時は打撃投手で給料が安かった時期。感謝すると同時に、「毎日、電話くれんかな」と思ったものです(笑)。