ウクライナ出身力士 安青錦がすべてを語った…単身来日して3年、新入幕で敢闘賞
「オレもいつかは土俵に立ってみたい」と
──2019年に世界ジュニア相撲選手権に出場するために15歳で初来日。その頃から、将来は大相撲の力士になりたいと思っていたのですか?
そうですね、力士にはなりたかったんです。でも、それには(大相撲にツテがある)誰かと知り合いにならなければいけなかった。たまたま(そうした人物と)知り合って、連絡先を交換しました。
──大相撲の動画などは見ていましたか?
昔から見ています。それを見てから、「オレもいつかは土俵に立ってみたい」と思っていました。印象が強かった動画は、初めて見た貴乃花関と朝青龍関の取組ですね(02年9月場所)。(朝青龍が)もろ差しになって、(貴乃花が)上手投げ。あれを見て、凄いな……と思いました。
──22年の来日はロシアのウクライナへの軍事侵攻直後。やはり、戦争の影響はあったのですか?
そうですね。自分の中では、大学を卒業してから世界大会などで優勝して、スカウトされて……と思っていた。でも、それ(ロシアの軍事侵攻)もあったから早く来日したんです。
──家族と話し合いなどはしましたか?
話はしたけど、自分は「日本に行く」と決めてたので、意見を求めるということはなかったです。でも、家族は応援はしてくれました。もともと両親には、「大学卒業後に大相撲に行く」と話していましたから。「自分の人生なんで、あなたの決めた道で行きなさい」と言われました。
──家族構成は。
兄貴と自分、両親です。3つ上の兄はお母さんは別なんです。腹違いですね。でも、結構仲がいいんですよ。
──現在も戦争は続いていますが、家族と連絡などは?
電話やビデオ電話、LINEで連絡はしています。
──ウクライナの近況などは。
友達はいっぱいいるので、いろいろ話は聞いています。両親? 両親はいま、ドイツにいるんです。お母さんはもともとドイツのクリーニング会社で働いていて、戦争が始まってからはお父さんも同じ会社で働いています。
──外国出身力士は故郷に仕送りをするケースも多いですが……。
それはしてないです。むしろ、家族には日本に来てもらいたいですね。力士になる前は1回来ましたけど、今後も来る機会があると思うので。その時に、いろいろしてあげたいです。
──単身来日しましたが、寂しくなることは。
でも、今は1人じゃない。親方、おかみさん、部屋のみなさんもいるので。本当にいい部屋に入った。安治川部屋じゃなかったら、こんなに早く(幕内に)上がれなかったと思います。
(聞き手=阿川大/日刊ゲンダイ)
▽安青錦新大(あおにしき・あらた) 2004年ウクライナ・ビンニツァ出身。19年世界ジュニア大会で3位となり、母国ではレスリングでも活躍。22年にロシアがウクライナに軍事侵攻した影響で、同年4月に来日。関西大などで稽古をし、12月に安治川部屋に入門。所要7場所で関取に昇進。新入幕の今年3月場所は11勝4敗で敢闘賞を受賞した。