「かつお節と日本人」藤林泰氏
■「かつお節の消費拡大のきっかけは『フレッシュパック』の発売でした」
かつお節といえば伝統的な食材で、化学調味料に押されて、消費量が減り危機的状況にあると思いがちだが、それは早計。
宮内泰介氏と共に本書を書いた藤林氏はいう。
「昭和初期まで、庶民の間では、かつお節のだしは正月などのハレの日の料理に使う程度で、日常的には使われていなかったようです。広く普及したのは意外と最近で、1970年代以降のこと。2000年には過去最高を記録しています」
1969年に、老舗「にんべん」が発売した「フレッシュパック」は家庭で削る手間を省いており、これが消費拡大のきっかけとなった。そして、80年代に入って、めんつゆ、だしの素など「調味料」の形でさらに伸びた。
「インドネシアを旅していて、ビトゥンという小さな町の港をぶらぶらしていたら、日本の中古冷凍船にフィリピン人が数人いたんです。聞けば、カツオを枕崎に運ぶという。船長は日本人で、かつお節の材料を日本にピストン輸送していて『儲かる儲かる』と笑っていました。その旅から帰ってきたら、共著者から電話がきて、沖縄の池間島のお年寄りが、戦前、南洋でかつお節を作っていた話を聞いた、面白そうだから一緒に調べないかというんです。ぼくも、ビトゥンの冷凍カツオの話をして、これはやるしかない、となったわけです」