「代理処罰」嶋中潤著

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 やがて、岡田の元にかかってきた一本の電話。機械を通したようなやけに高い女の声が、「娘は預かった」と告げる。そして、2000万円を“娘の母親”に持ってこさせろと言う。エレナが帰国した前日、彼女は車で人をはねて死なせていた。しかも、被害者を助けずに立ち去ったという証言もあった。

 身代金の受渡期日は1週間後。それまでにエレナを連れ戻すことができるのか。そして、犯人はいったい何者なのか。物語は二重三重の謎をはらんで進んでいく。
「ブラジルは、自国民の引き渡しを憲法で禁じており、日本で罪を犯したブラジル人が母国へ帰ってしまったら、日本の警察は手を出せません。その場合、ブラジルで裁判を行う代理処罰を申請することができますが、何とももどかしい制度です。今後は、法の矛盾を題材とした作品も書いてみたいと思っています」
(光文社 1500円)

◇しまなか・じゅん 1961年千葉県生まれ。東京工業大学大学院総合理工学研究科修了。リクルートグループを経て宇宙関連企業で国際宇宙ステーションにおける実験の地上サポート業務に従事。第17回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞。

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