「消えたい」高橋和己著
■「患者の〈親子関係〉が見えない。それが虐待に気づいたきっかけでした」
著者が、患者が虐待されて育ったことに気づいたきっかけは〈親子関係〉だった。
「うつ病などの場合は親子関係が重要なことが多いんですが、7~8年前、親子関係が〈見えない〉患者さんが増えているのに気づきました。親子関係が見えないのは、本人の意識の中に親がいないから。親に虐待されていたのに、〈いいお母さんでした〉と言う。どういうことをしてもらったか聞くと、考えた末に〈ちゃんとご飯を出してくれた〉。母親のやさしいところを見つけようとしても、それしかないんですね」
殴るとか蹴るというレベルではない。言うことを聞かないからと小学4年生の息子の足の爪をペンチではがすなど、常軌を逸している。食事をさせてもらえず、学校の給食が唯一の食事だったという患者もいる。
「それでも子どもは、親は自分のことを愛しているはずだと思い、自分が悪い子だからいけないのだと、必死でいい子になろうとする。努力が足りないと自分を責めながら生きてきて、大人になってから燃え尽きてうつ病になるんです」