「毒蝮流!ことばで介護」毒蝮三太夫氏
■「これからは“言葉によるかまい合い介護”の時代だよ」
介護と聞けば、食事を作ったり、付き添いをするなど日常生活を世話するような行動を思い浮かべるが、年寄りのアイドルである著者が実践し、お勧めするのは別の方法。それが言葉による介護だ。
「俺、ラジオの中継で街に出て、お年寄りにババアとか死に損ないとかってケナし続けてきたじゃない。普通なら怒りそうなのに、言われた人はなぜかみな喜んでくれるから最初は不思議だったんだよ。でもある日、年寄りはかまわれることがうれしいんだ、って気付いた。俺は普通に接していただけだけど、話しかけることで年寄りが元気になるなら、言葉は立派な介護アイテムだよな」
とはいえ、ただ毒舌を吐いているわけではない。何十万人という年寄りと接する中で自然と培われた“マムシ流つきあい術”があるという。
「俺はね、本心で今の平和な日本をつくったのは年寄りだと思ってるの。そうした感謝の念を持ったうえで心がけているのが、その人との間に『快適空間』をつくること。いってみれば温泉みたいに居心地がいい空間のことなんだけど、それにはまず笑顔が大事。笑顔がない言葉は“文字”だからね。で、下の名前で呼んだり、話を真面目に聞きながら、相手に楽しくなってもらうよう一緒になって面白がるんだ。年寄りは『時間の無駄だと思われてないか』っていつも気を使ってるんだよ。そこに気が付けば、やさしい気持ちで向き合えるものさ」