「なぜ『つい』やってしまうのか」デイビッド・ルイス著、得重達朗訳
人はみな自分の意思に基づいて理性的に行動しているつもりでいるが、食べ過ぎ、飲み過ぎ、一目惚れや性衝動、衝動買い、暴力など、実は衝動的に「つい」やってしまうケースは意外と多い。
本書は、人が自制心を失うメカニズムや、衝動によって起こる問題を紹介しつつ、衝動の持つ長所と短所を考察し、自制心を鍛える方法にも言及している。
人が自制心を失う瞬間を挙げてみると、その引き金として視覚や嗅覚、聴覚などの五感が深く関わっていることがわかる。また脳の一部を損傷した人の中に衝動性が抑えられなくなる人がいることや、脳が発達途中のティーンエージャーに衝動的な行動が多いことから、脳と衝動性の関係も無視できない。
面白いのは、衝動を抑える自制心は筋肉と似ており、鍛えることで強くなるが、使い続けると疲労して自制心が薄れるという指摘だ。ひとつの物事を自制している最中には、別の方面の衝動を抑えにくくなるという事例も興味深い。(CCCメディアハウス 2000円+税)