「今日より明日は少しはマシになる」と信じる希望の思想
「プラグマティズムの作法」藤井聡著
土木工学を専攻して京大で公共政策の教壇に立つ著者。そんな人がなぜ哲学を講じるのか。
たとえば渋滞問題を解決するためには街路のデザインなどを工夫する以外にも、みんなに車ばかり使わないようコミュニケーションを図るという手があるのではないか。そんな「より望ましい需要をつくる」ためにもプラグマティズムが役立つという。学者が高説を述べるのに対して「それで?」と問い返す地に足の着いた経験的知性。著者はさらに構造改革や自由化を進めてきた昨今の日本政治・経済の状況を、プラグマティズム的な知性の不足によるものと見る。大恐慌時代のデフレ不況を克服したケインズはプラグマティズム的な知性だった。いまはそれを見習うべきなのだ。
3年前の著作だが、現政権暴走下のいまこそ役立つ一冊だ。
(技術評論社 1580円+税)