単なる「差別ババア」ではないことに気づく

公開日: 更新日:

 本書は、曽野氏の長きにわたるキャリアで出版された73作の小説・エッセー・ノンフィクションと新聞コラムの中から141の「人生論」を抜粋したものである。

「他人の美点をわかることは才能である。他人の悪い点に気づくことはどんな凡人にもできる」

「次第に人生が見えてくると、人間が自分でなしうるのは、多くの場合与えられた偶然に乗っかっての結果だということがわかってくる。すると、『あふれるほどの感謝』というものが、ごく自然にできるようになる」

 こういった言葉が多数並ぶのだが、前書きにも本文にも書籍説明にも出てくる「努力すれば必ず報いられる」の欺瞞などにも迫り、人生には分相応というものがあり多くを求め過ぎぬよう戒めをするのである。

 紙媒体を主戦場とする著者は、ネットで炎上した際、「私のことを理解している紙の読者を相手にしていたはずなのに……」となり、ますますネットを嫌うようになる。そして、ネットユーザーもその著者をますます嫌いになる。これが現在の曽野氏をめぐる状況ともいえるが、曽野氏という先入観を捨てて本書を読めば、瀬戸内寂聴の説法を聞いているようにも感じられるだろう。その感覚を得た上で、曽野氏の名言を「つまみ食い」できる本書はおトクである。★★(選者・中川淳一郎)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    火野正平さんが別れても不倫相手に恨まれなかったワケ 口説かれた女優が筆者に語った“納得の言動”

  2. 2

    中日1位・高橋宏斗 白米敷き詰めた2リットルタッパー弁当

  3. 3

    巨人今季3度目の同一カード3連敗…次第に強まる二岡ヘッドへの風当たり

  4. 4

    八村塁が突然の監督&バスケ協会批判「爆弾発言」の真意…ホーバスHCとは以前から不仲説も

  5. 5

    眞子さん渡米から4年目で小室圭さんと“電撃里帰り”濃厚? 弟・悠仁さまの成年式出席で懸念されること

  1. 6

    悠仁さま「学校選抜型推薦」合格発表は早ければ12月に…本命は東大か筑波大か、それとも?

  2. 7

    【独占告白】火野正平さんと不倫同棲6年 元祖バラドル小鹿みきさんが振り返る「11股伝説と女ったらしの極意」

  3. 8

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  4. 9

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動

  5. 10

    無教養キムタクまたも露呈…ラジオで「故・西田敏行さんは虹の橋を渡った」と発言し物議