単なる「差別ババア」ではないことに気づく

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 本書は、曽野氏の長きにわたるキャリアで出版された73作の小説・エッセー・ノンフィクションと新聞コラムの中から141の「人生論」を抜粋したものである。

「他人の美点をわかることは才能である。他人の悪い点に気づくことはどんな凡人にもできる」

「次第に人生が見えてくると、人間が自分でなしうるのは、多くの場合与えられた偶然に乗っかっての結果だということがわかってくる。すると、『あふれるほどの感謝』というものが、ごく自然にできるようになる」

 こういった言葉が多数並ぶのだが、前書きにも本文にも書籍説明にも出てくる「努力すれば必ず報いられる」の欺瞞などにも迫り、人生には分相応というものがあり多くを求め過ぎぬよう戒めをするのである。

 紙媒体を主戦場とする著者は、ネットで炎上した際、「私のことを理解している紙の読者を相手にしていたはずなのに……」となり、ますますネットを嫌うようになる。そして、ネットユーザーもその著者をますます嫌いになる。これが現在の曽野氏をめぐる状況ともいえるが、曽野氏という先入観を捨てて本書を読めば、瀬戸内寂聴の説法を聞いているようにも感じられるだろう。その感覚を得た上で、曽野氏の名言を「つまみ食い」できる本書はおトクである。★★(選者・中川淳一郎)

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