あの戦争「外務省善玉説」は本当か

公開日: 更新日:

「外務官僚たちの太平洋戦争」佐藤元英著

 太平洋戦争に関し、外務省は対米英戦争を極力避けようとしたが、陸軍の暴走を押さえることができなかったという印象が強いが、本書を読むとそのような外務省善玉説が間違っていることがわかる。

 佐藤元英氏は、〈日米戦争の開戦手続きにおいて、結果的に外務省は陸軍の要望する無通告開戦に協力することとなった。その経緯を辿ると、外務省内の特に条約局や南洋局の、革新派と称される少壮外交官らが企図した開戦指導が見えてくる。〉と強調するが、確かにその通りだ。

 現在、国会で審議されている安保関連法案についても、自衛隊を地球の裏まで送り出すことを考えているのは外務官僚だ。「俺たちはエリートなので戦場に行くことはない。俺たちは命令をし、非エリートの民衆が命令に従って戦えばいい」という外務官僚の不遜な発想は、戦前から現在まで変わっていないことがわかる。

 また、当事者にとっては深刻であるが、国益に関係のない抗争にエネルギーを費やす外務官僚のグロテスクな姿が浮き彫りになる。陸軍も外務省も、戦争責任について本質的な違いがないことが本書を読んでよくわかった。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    都知事選2位の石丸伸二氏に熱狂する若者たちの姿。学ばないなあ、我々は…

  2. 2

    悠仁さまの筑波大付属高での成績は? 進学塾に寄せられた情報を総合すると…

  3. 3

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 4

    竹内涼真“完全復活”の裏に元カノ吉谷彩子の幸せな新婚生活…「ブラックペアン2」でも存在感

  5. 5

    竹内涼真の“元カノ”が本格復帰 2人をつなぐ大物Pの存在が

  1. 6

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  2. 7

    二宮和也&山田涼介「身長活かした演技」大好評…その一方で木村拓哉“サバ読み疑惑”再燃

  3. 8

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  4. 9

    小池都知事が3選早々まさかの「失職」危機…元側近・若狭勝弁護士が指摘する“刑事責任”とは

  5. 10

    岩永洋昭の「純烈」脱退は苛烈スケジュールにあり “不仲”ではないと言い切れる