戦争法案の議論を透視したような慧眼
「田中清玄自伝」田中清玄・大須賀瑞夫著
戦前に武装共産党を指導し、戦後は右翼の黒幕として活躍した田中清玄の「自伝」が抜群におもしろい。現代の古典と言っていいほどである。まず、その「靖国神社」批判を引こう。
「中国から鄧小平さんが来られた時に『鄧小平が陛下に会うのなら、その前に靖国神社にお参りせよ』などと言ったバカな右翼がいました。陛下が訪中されて鄧小平さんに会う前に、四川省か山西省か、どこか田舎のお寺をお参りして来い、そうでなければ会わさないと、まったく逆のことを言われたら、日本人はどう思いますか。それとおんなじことだ。(中略)もっとひどいのは、それを今、大挙して国会議員たちが、年寄りも若いのもふんぞりかえって参拝していることだ。今年も去年より何十人増えたとかいって騒いでいる。この政治家たちは『平和、平和』って、一体何を考えているんだ。彼等が平和って言ったって、『戦争をやるための口実だ』ぐらいに思ったらいいですよ」
「戦争法案」が論議されている現在を透視したような発言だろう。
田中によれば、石橋湛山が内閣を組織して閣僚名簿を昭和天皇のところへ持って行った時、天皇は外相の岸信介の欄を指さし、