著者のコラム一覧
宮城安総工作舎アートディレクター

1964年、宮城県生まれ。東北大学文学部仏文科卒。1990年代から単行本、企業パンフレット、ポスター、CDジャケットなど幅広く手掛ける。

虹色の向こうに「移ろい」が見える

公開日: 更新日:

「バス停に立ち宇宙船を待つ」友部正人著

 友部正人。1950年生まれ。ミュージシャン/詩人。帯に「5年ぶりの新詩集」「ニューヨークの部屋で……時差ぼけの頭で思いつくままに……三年ぐらいの季節ごとの詩を書いてみた」とある。

 目次を繰れば「遠いアメリカ」「ハロウィンの夜に」「メイド・イン・USA」と、アメリカへの思いがそこはかとなく漂う。ただ、詩人がいう「季節」は、俳句のように必ずしも字面には表れず、読者の想像力に委ねられる。その一方、「時の移ろい」を静かに感じさせる大切な仕掛けが本書には施されている。

 B6変型。黄金比を感じさせる縦長の比率。カバーは、クラフト紙風、茶色の「ブンペル」。印刷インキは不透明ホワイト+蛍光ピンク+スミ。紙と紙の間に絵の具を挟み、はがしたときに偶然できる絵柄を楽しむ「デカルコマニー」。その一部分を切り抜いた挿画とゴシック体によるタイトル文字、とシンプルな構成だ。

 さて、本文用紙に着目。折(16ページ)ごとに色が変わる。ピンク→オレンジ→黄→黄緑→水色→ベージュ→グレーと、淡い虹色様のグラデーションになっている。版元・ナナロク社の担当編集の方に伺ったところ、それぞれ銘柄も変えてあるとのこと。Aプラン[ローズホワイト]→OKミルクリーム[ロゼ]→OKソフトクリーム[バニラ]→ラフクリーム琥珀→Aプラン[スカイホワイト]→いしかりN→OKアドニスラフ[W]。滑らかな虹色を浮かび上がらせる、用紙選びのセンスに加え低廉な「本文用の紙」を織り交ぜるなど、予算への目配りも怠りない。そして、紙色の緩やかな遷移が先述の「季節」を演出する趣向。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    都知事選2位の石丸伸二氏に熱狂する若者たちの姿。学ばないなあ、我々は…

  2. 2

    悠仁さまの筑波大付属高での成績は? 進学塾に寄せられた情報を総合すると…

  3. 3

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 4

    竹内涼真“完全復活”の裏に元カノ吉谷彩子の幸せな新婚生活…「ブラックペアン2」でも存在感

  5. 5

    竹内涼真の“元カノ”が本格復帰 2人をつなぐ大物Pの存在が

  1. 6

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  2. 7

    二宮和也&山田涼介「身長活かした演技」大好評…その一方で木村拓哉“サバ読み疑惑”再燃

  3. 8

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  4. 9

    小池都知事が3選早々まさかの「失職」危機…元側近・若狭勝弁護士が指摘する“刑事責任”とは

  5. 10

    岩永洋昭の「純烈」脱退は苛烈スケジュールにあり “不仲”ではないと言い切れる