「御用船帰還せず」相場英雄著
西郷隆盛は園部藩士が江戸城御金蔵の分銅金の隠し場所を知る小栗上野介を処刑してしまったことを知って激怒した。若い藩士に命じて、歴代の勘定奉行の業績を調べさせたら、〈荻原重秀〉の名の上に斜線が引かれていた。
荻原重秀は徳川綱吉の信任を受け、異例の早さで〈勘定奉行〉に出世した人物だった。綱吉に〈余とともに、存分に壊せ〉と命を受け、大ナタを振るって不正を行う者を処分した。
だが、いずれ公儀の財政が息詰まることは目に見えていた。金銀山を管轄する佐渡奉行になったとき、荻原は金銀の改鋳という非常手段を取ることに……。
幕府の財政の危機を救った勘定奉行の活躍を描く。(幻冬舎 1600円+税)