「高度プロフェッショナル制度」で過労死と賃下げが加速!
残業をすれば残業代が支払われる。そんな当たり前の制度を、安倍政権がぶち壊そうとしている。昆弘見著「あなたを狙う『残業代ゼロ』制度」(新日本出版社 1300円+税)では、過労死しようが給料が下がろうがすべて自己責任となる、新たな労働基準法の恐るべき落とし穴について詳述している。
安倍政権が2015年4月3日に国会に提出した労働基準法の改正案。その中心点は、「特定高度専門業務・成果型労働制」を創設するとしていることだ。別名「高度プロフェッショナル制度」と呼ばれ、年収1075万円以上で高度の専門的知識を必要とする仕事に従事する労働者を対象に、時間ではなく成果で評価をする。これにより、長時間労働を抑制するとともに、創造的な能力を発揮しながら効率的に働くことのできる環境を整備するのが目的だという。
労働者にとって非常によい改正案に思えるが、実際はそうではない。対象となる労働者には、従来の労働基準法による「労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金」についての規定が適用されなくなる。労働時間を抑制するといいながら、労働時間規制を除外しては、労働者は経営者の思いのままに酷使されても文句が言えない立場になってしまう。
さらに、対象となる職種については法律が通った後に定めるというデタラメぶり。年収要件もいつ変更されるか分からないため、年収1075万円以下の人でもまったく安心はできない。現に安倍首相は、2014年6月16日の衆議院決算行政監視委員会で、民主党議員からの「年収要件はこの先も下がらないと考えていいのか」という質問に対し、経済は生き物であるため分からないという趣旨の回答をしているのだ。
「高度プロフェッショナル制度」は管理職でなくても適用されるため、すでに管理職の中高年は逃げ切ることができるかもしれない。しかし、子や孫の世代はお先真っ暗。この法案を通してよいのか、全国民が考えるべきだ。