弱者や少数者と共に希望が語れる社会への道
「バーニー・サンダース自伝」バーニー・サンダース著 大月書店 2300円+税
金と権力にまみれた政治や、その政治を生業とする政治家たちと私たちはどのようにつき合っていけばいいのか。おぞましい政治の世界は、遠くから観戦して面白がるのがせいぜいで、自分はなるべく関わらないように生きるのが賢明かもしれない。
だが、そのように自分は政治から自由であると思っている人ほど、実はすでに政治にどっぷりとのみ込まれ、権力に利用されているかもしれない。自分の平穏な生活を本当に政治の禍から守るためには、逆に普段から政治と向き合い、これに働きかけていく必要がある。
周知の通り、本書の著者は、先の米大統領民主党予備選で「民主的社会主義」による「政治革命」を唱え、全米に一大旋風を巻き起こした政治家である。
最終的にはヒラリー・クリントン候補に道を譲ったものの、彼は「トップの1%が下から90%より多くの富を所有している」格差社会米国の現状を告発し、富裕層や大企業ではなく、労働者や中間層など大多数の国民のための政治を訴え、今でも熱狂的な支持を得ている。
彼自身、自らを「ホワイトハウスのアウトサイダー」(本書の原題)と呼ぶように、その終始一貫したラジカルな政治姿勢によって、これまで常に少数派の道を余儀なくされてきた。しかし今の米国社会では、大多数の国民自身が政治から排除され「アウトサイダー」となっており、彼の訴えは、むしろ現代民主主義の議論における主流の位置を占めるようになった。
もはや「右」や「左」などではない。彼にとって重要なのは、何よりも人々の生活の現実であり、弱者や少数者と共に希望が語れる社会の実現である。そしてその理念は、日常的かつ粘り強い政治参加を通じて、初めて現実のものとなる。
政治家の自伝は、概して自慢話か自己正当化の手段なので、引き算して読まなければならない。しかし本書は、これからの「新しい政治」がどのように生まれるのかについても私たちに教えてくれる。