「パイルドライバー」長崎尚志氏
「読む人によって、サイコロジカルサスペンスだとか、警察のバディーもの、群像小説、謀略小説など違った感想をいただきます。取り扱う事件が複雑で奇想天外な分、警察への取材は徹底して行い、刑事同士の呼び方から部署同士の関係性までリアリティーを追究しました。恐らく、警察という組織について今、日本で一番正確に書かれている小説だと思いますよ」
長年漫画原作に携わってきた著者だが、小説の執筆は全くアプローチが異なる作業だという。
「漫画原作はシナリオのようなもので、絵にしたときにどうなるかを考えて書く。一方の小説はそれが必要ない分、内面描写をとことん追究できます。今回の小説を絵にしたら、ものすごくクドイ内面シーンを描かなければならないので、漫画にはならないでしょうね」
ダイナミックに猟奇事件を追う中で、主人公らはもちろん、その他の警察官や事件関係者の葛藤や焦りも緻密に描かれていく。
一方、次から次へと浮かび上がる謎の連続で、ページをめくる手を止めさせてくれない。