「パイルドライバー」長崎尚志氏
町のお巡りさんから捜査1課のアウトローまで、魅力的な警察官が爽快に事件を解決していく小説は映像化されているものも多い。そんな一大ジャンルとなっている警察小説に、出色の作品が登場した。著者は、漫画原作者として数多くの有名作品に関わってきた経歴を持つ。
「警察が登場する作品には何度も携わってきましたが、正統派の路線、王道の小説というものをずっと書いてみたかった。初めての警察小説なので、盛りだくさんに要素をぶち込みました。知り合いの編集者からは、どれかひとつの要素でも1冊書けたのに、もったいないと言われてしまいました(笑い)」
主人公の若手刑事・中戸川俊介は、警察を辞めようと思っていた矢先にある事件の捜査を命じられる。それは、神奈川県の閑静な住宅街で起きた一家惨殺事件。夫婦と9歳の息子が大型刀で刺され、血まみれの遺体にはピエロの化粧が施されるというおぞましいものだった。しかもこの事件は、15年前に起きた一家惨殺未解決事件と不気味なほど似通っていたのだ。
現場に急行した中戸川は、そこで長身痩躯の初老の男と出会う。彼、久井重吾は15年前の事件を担当していた元刑事だった。変わり者のOBと組まされた中戸川は警察を辞めるどころか、複雑な猟奇事件の核心にいや応なく迫ることになる。時も国境も超えた複数の事件や関係者が絡み合い、そのスピード感とスケールの大きさは圧巻のひと言だ。