マイルス・デイビスは“鬼上司”でハンクは“営業マン”
趣味を尋ねられたとき、「ちょっとジャズを聴くぐらいかな……」なんて言えたら知的でオシャレな人と思われること間違いない。しかし、ジャズという音楽はなかなかハードルが高い。19世紀末にアメリカで誕生し、さまざまな音楽のエッセンスを吸収しながら独自の進化を遂げてきたため、難解な側面もある。
そこで高野雲著「ビジネスマンのための(こっそり)ジャズ入門」(シンコーミュージック・エンタテイメント 1800円+税)では、オススメのジャズマン25人を現代のビジネスマンに例えて解説。その生きざまや音楽のスタイルについて、どんな企業に属しどんな仕事をしてきたのかなどに置き換え、分かりやすく紹介している。
モダンジャズ史上もっとも大きな存在といわれるマイルス・デイビス。彼を会社の上司に例えるならば、間違いなく“鬼上司”だ。常勝軍団のプロジェクトチームを率い、常に他社を上回る斬新で質の高い企画を成功させる。部下に対して要求する水準も高く、彼らは頭を悩ませる日々を送るが、ここでつぶれず、鬼上司のメガネにかなう企画を出し続けられた部下は将来、独立起業して成功する、といった具合だ。
トランぺッターでもあるマイルスのトレードマークは、ミュートと呼ばれる弱音器を取り付けた音色。音量が抑制されると同時に音は高く鋭くなるが、これをマイクに接近させて吹くことで、奏でられる独特なサウンドを確立したのが彼だった。また、彼の演奏についてこられるジャズマンは、たとえ無名の新人でも積極的にバンドのメンバーに採用した。そんな“チーム・マイルス”からは、マーカス・ミラーやジョン・コルトレーンなどの優秀なジャズマンが輩出された点からも、この鬼上司のすごさが分かるだろう。
本書では、コツコツ手堅い営業マンタイプのハンク・モブレー、多角経営の成功者チック・コリアなど、初心者の耳に優しい演奏をするジャズマンらも紹介。親近感の湧くジャズマンを選んで聴いてみるのもお勧めだ。