「台南『日本』に出会える街」一青妙著
海外旅行の目的地として人気の台湾。中でも近年、注目が集まる古都・台南の魅力を、「台南市親善大使」の著者が教えてくれるフォト・ガイドブック。
台南は台湾の歴史が始まった場所でもある。1600年代、オランダ人が台南市内にレンガ造りの要塞や城を建築。清朝時代に城門ができ中華風の廟や店舗が林立、日本統治時代に入ると道路が整備され、木造瓦屋根の日本家屋や日本ではやっていた洋風建築物が次々と建てられた。
重層するこうした歴史が台南の街に独自の文化をもたらした。特に50年間に及んだ日本統治時代に建てられた建物は「日式建築」と呼ばれ、台南のあちらこちらで出合う。
台南の人々は古くなった日式建物を自分たちの趣向に合わせ現代的にアレンジして進化させ、利用している。
まずは、こうした日式建物の民家をリノベーションした人気のカフェを巡る。スイーツが人気のカフェ「KADOYA」は、看板にカタカナで店名が表記され、まるで日本の昭和のレトロな喫茶店をほうふつとさせる。
リノベカフェの先駆け「鹿早茶屋」は、洋館なのだが2階は畳敷きの大部屋で、洋風と和風、そして台湾風が融合して心地よい空間をつくり出している。
当地では、民家だけでなく日本統治時代の大型建築が文化施設や商業施設にリノベーションされ、観光スポットとして人気を集めている。
呉服商だった日本人の林方一の投資によって1932年に創業した百貨店「林百貨」もそのひとつ。当時のまま復元された5階建ての建物は重厚で趣があり、現在は台南のお土産がすべて揃うスポットとして人気を集める。
さらに100年以上の歴史を持つ公設市場「西市場」も案内。増改築を繰り返してきた市場は、迷路のように入り組んでいる。かつての賑わいはなくなり、一時はシャッター街の様相を呈していたが、若者たちが新たな風を吹き込んでいる。
お薦めグルメなどの紹介にとどまらず、それぞれのオーナーなどの思いや彼らの人生などにも触れ、読み物としても楽しめる。
その他、新渡戸稲造が近代化を推進したサトウキビプランテーションや製糖工場跡、現地で尊敬を集める日本人の一人、八田與一が建設に尽力した烏山頭ダム、風情あるバロック様式の家が立ち並ぶ「老街」、絶景の夕日スポットになっている塩田など、台南の表も裏も歩きつくす。
異国情緒を堪能しながらも、隠れ見える「和風」にどこか懐かしささえ感じる台南は、日本人には心地よい土地といえるだろう。
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