「アリガト謝謝」木下諄一氏
東日本大震災から1カ月後の11年4月11日。日本政府は時の首相のメッセージとして、米、英、ロシア、中国などの有力紙に感謝広告を掲載した。しかし、どの国より桁違いの高額の義援金200億円を送ってくれた台湾の新聞には、なぜか広告を出さなかった。
本書は、この事実に疑問を感じ、有志で寄付を募り感謝広告を出した日本人たち、そして被災者に寄付してくれた台湾人たち、合わせて30~40人への取材をもとに、日台の知られざる交流を描いた短編連作小説だ。
「人口たった2300万人の台湾人が、なぜ日本のために200億円もの寄付金を集めることができたのか、台湾ってどんなところかを、東北の被災地の人たちが知りたがっている、と13年秋に耳にしたのが執筆のきっかけです。それで、寄付の事例を紹介しつつ、台湾を知ってもらう本を書こうと取材を始めました」
著者が取材を進めていく中で分かったことはこうだ。
「親日感情が強いといわれる台湾でも、その理由はさまざまです。確かに日本に占領された歴史はありますが、第2次大戦後、蒋介石率いる中国国民党政府に支配されたときに、台湾人は日本占領時代よりもっと大変な思いをしたんですね。そのため年配者は日本統治時代はむしろ良かった、と懐かしむ感情が強い。その点は韓国や中国と違います。一方、若い世代は日本の漫画やアニメが大好きで、日本に非常に親しい感情をもっています」