「芝公園六角堂跡」西村賢太著

公開日: 更新日:

 芥川賞受賞作「苦役列車」の映画化にあたって「友ナシ、金ナシ、女ナシ。この愛すべき、ろくでナシ」というキャッチフレーズを奉られた北町貫多。その北町貫多シリーズの最新作品集。

 有名な新人文学賞を取ったおかげで一気に名を知られるようになった貫多。あるテレビ番組で、貫多が中学2年の頃から憧れ続けてきた歌手のJ・Iと知り合い、ホテルでのライブに招待される。ライブ後、J・Iと一緒に写真を撮るなどいい気分のまま帰途に就くのだが、そこで愕然とする。そこは貫多が敬愛してやまない作家・藤澤淸造の終焉の地のすぐそばだったのだ。かつては祥月命日ごとにこの地を訪れていたのに、ここに来るまで気づかないとは。

 虚名に浮かれて、大事なものを見失っていた貫多は、己が文学を目指した初心に帰ることを決意する――。

 この表題作の他3編が収められている。いずれもその前の作品を受け、私小説にこだわり続ける自分の原点を見直していくという主題が繰り返し表れるという、ロンド形式となっている。貫多ファン、待望の一冊。(文藝春秋 1500円+税)

【連載】ベストセラー早読み

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    火野正平さんが別れても不倫相手に恨まれなかったワケ 口説かれた女優が筆者に語った“納得の言動”

  2. 2

    中日1位・高橋宏斗 白米敷き詰めた2リットルタッパー弁当

  3. 3

    巨人今季3度目の同一カード3連敗…次第に強まる二岡ヘッドへの風当たり

  4. 4

    八村塁が突然の監督&バスケ協会批判「爆弾発言」の真意…ホーバスHCとは以前から不仲説も

  5. 5

    眞子さん渡米から4年目で小室圭さんと“電撃里帰り”濃厚? 弟・悠仁さまの成年式出席で懸念されること

  1. 6

    悠仁さま「学校選抜型推薦」合格発表は早ければ12月に…本命は東大か筑波大か、それとも?

  2. 7

    【独占告白】火野正平さんと不倫同棲6年 元祖バラドル小鹿みきさんが振り返る「11股伝説と女ったらしの極意」

  3. 8

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  4. 9

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動

  5. 10

    無教養キムタクまたも露呈…ラジオで「故・西田敏行さんは虹の橋を渡った」と発言し物議