「スウィングしなけりゃ意味がない」佐藤亜紀氏

公開日: 更新日:

 青春小説としても、また音楽小説としても楽しめるが、著者の深奥な知識と緻密な取材によって描き出される風景は、あまりにも重厚で衝撃的だ。主人公たちの目を通した、戦争の狂気や滑稽さを嫌というほど突きつけられる。

 主人公のエディは、軍需会社の経営者を父に持つお坊ちゃま。ヒトラー・ユーゲントの活動に参加しながらも、やぼくさいシャツと半ズボンを着せられ、国歌を歌いながら行進させられる毎日に、心底うんざりしている。やがて、ピアノの天才であり8分の1がユダヤの血をひくマックスや、ヒトラー・ユーゲントのスパイをさせられているクー、国防軍の英雄を父に持つ上級生のデュークらと共に、ジャズの魅力に取りつかれていく。

「体制に反発する彼らですが、秘密国家警察であるゲシュタポが彼らを取り押さえ、収容所送りにするような処罰が行われた例は、あまり多くはなかったようです。表向きの指令は下っていても、現場はそれほどナチに傾倒してはいなかったとも考えられます。しかし、ハンブルクにおいては富に支えられた“悪ガキ”どもの傍若無人ぶりが他の都市とは一線を画していたこと、そして1942年以降ゲシュタポのトップが非常に狂信的なナチに代わったことなどから、徐々に追い詰められ、大摘発を受けたんです」

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    火野正平さんが別れても不倫相手に恨まれなかったワケ 口説かれた女優が筆者に語った“納得の言動”

  2. 2

    【独占告白】火野正平さんと不倫同棲6年 元祖バラドル小鹿みきさんが振り返る「11股伝説と女ったらしの極意」

  3. 3

    立花孝志氏の行為「調査要求」オンライン署名3万6000件に…同氏の次なるターゲットは立憲民主党に

  4. 4

    ヤンキース、カブス、パドレスが佐々木朗希の「勝気な生意気根性」に付け入る…代理人はド軍との密約否定

  5. 5

    眞子さん渡米から4年目で小室圭さんと“電撃里帰り”濃厚? 弟・悠仁さまの成年式出席で懸念されること

  1. 6

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動

  2. 7

    オリ1位・麦谷祐介 暴力被害で高校転校も家族が支えた艱難辛苦 《もう無理》とSOSが来て…

  3. 8

    斎藤元彦知事に公選法違反「買収」疑惑急浮上しSNS大炎上!選挙広報のコンサル会社に「報酬」か

  4. 9

    W杯本番で「背番号10」を着ける森保J戦士は誰?久保建英、堂安律、南野拓実らで競争激化必至

  5. 10

    無教養キムタクまたも露呈…ラジオで「故・西田敏行さんは虹の橋を渡った」と発言し物議