「暗い時代の人々」森まゆみ氏
権力に主体性をもって毅然と立ち向かった人々は他にもいる。2人の子を抱え、職を転々としながらも日本初の婦人社会主義団体「赤瀾会」を創立した九津見房子、さらには竹久夢二、古在由重、西村伊作の生涯にも肉薄。
「軍国主義に便乗した作家や詩人が多い中、この9人はブレなかった。皆、失敗が多く、決してエリートではなかったけれど、暗い時代にかすかな光をともした人々なのです」(亜紀書房 1700円+税)
▽もり・まゆみ 1954年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。出版社勤務ののち、84年に地域雑誌「谷中・根津・千駄木」を創刊。09年の終刊まで編集人を務めた。政権や広告会社などの仕掛け人の意図で左右されない、送り手と受け手の相互交流を目指した「谷根千」マインドは今も健在。近著に「子規の音」「『青鞜』の冒険 女が集まって雑誌をつくるということ」など。