暑さ吹っ飛ぶ「最新怪談本特集」
「山の怪奇 百物語」山村民俗の会編
梅雨明け前から猛暑の予感を抱かせる今年の夏。早くもクーラー全開の日々が始まったが、たまには昔の人に倣って、暑さを忘れるために怪談を読んでみるのも一興だ。日常と隣り合わせの異界体験や、土地土地に伝わる妖怪伝説に思わず背筋も凍る5冊を紹介する。
山登りの愛好家らが集まる歴史ある民俗研究会の会員による寄稿集。いにしえのイベント「百物語」のように、それぞれが山に関するとっておきの奇譚を披露する。
かつて秘境中の秘境といわれた奥那須の男鹿岳。その山頂近くにかつて安倍貞任が立てこもったと語り伝えられる「安倍ケ城」の館址が、今も残されているといわれる。館址に眠る金鶏の伝説を信じ、山中に姿を消した平吉と、帰らぬ許嫁を捜して山へ分け入った早百合の物語(奥那須安倍ケ城の怪)をはじめ、黒部奥山の「猫又」や、立山の「姥ケ石」などの地名にまつわる伝説を紹介する「北アルプスの怪異伝説」など。日本各地の山という異界を舞台にした19作を収録。(河出書房新社 1200円+税)