暑さ吹っ飛ぶ「最新怪談本特集」
「迷家奇譚」川奈まり子著
元AV女優の著者が自らの体験を交えながらつづる怪異譚。
中学2年のとき、中国の説話を研究していた父のフィールドワークに同行して訪ねた岩手県盛岡市の老舗旅館で遭遇した座敷童をはじめ、撮影で行った伊豆の廃虚で見かけた首吊り死体の亡霊や共演者が遭遇した夜中のトンネルで遊ぶ幼い兄弟の幽霊、人面犬や母子の地縛霊などの目撃談が絶えない埼玉県の「畑トンネル」で知人のライターを襲った不思議な体験など16話を収録。井原西鶴の怪異譚「人形の恋」、若くして亡くなった人の遺影を花嫁人形に添えて寺に奉納する青森県の習慣「人形婚」、そして現代の「リアルドール」にとりつかれて死に至った男の話など、時空を自在に行き来しながら読者を異界に誘い込む。(晶文社 1600円+税)