暑さ吹っ飛ぶ「最新怪談本特集」
「里山奇談」coco、日高トモキチ、玉川数著
虫好きは、自分の専門に「屋」をつけて「蝶屋」「蛾屋」と称する。虫だけに限らず、好きな生き物と出合うために野山を出かけてゆく人種を総じて「生き物屋」と呼ぶそうだ。本書は、そんな生き物屋たちの山での不思議な体験を集めた奇談集。
蜘蛛屋の川満さんが、知り合ったヤマセミ屋の神内さんに誘われ、夜の観察会に参加してみると、一行は瞬く間に夜陰に紛れて見えなくなってしまう。
神内氏によると、彼らが戻る姿を見たことがないという。毎月1回必ず無人駅の前に集まる彼らを追ってきた神内氏は、自分が幽霊を見ているのか確かめたくて川満さんを誘ったらしい。(「観察会」)
その他、蛾屋だった亡妻の霊と信じる白蛾と暮らす男の話(「白蛾」)など40余話を収録。(KADOKAWA 1400円+税)